新潟県30市町村を下越(13市町村)・中越(12市町村)・上越(3市町村)・佐渡(1市)・岩船離島(1村)の5地域に分けて住宅着工数を並べ直すと、R5の県計8,385戸のうち下越が5,450戸(65.0%)を占め、下越一極集中の構図が確認できます。
10年変化(H25→R5)では、上越3市町村が-46.2%と5地域で最大の減少幅で、上越市-43.8%・糸魚川市-63.1%・妙高市-29.5%と3市町村すべてが大きく減少しています。一方佐渡は-27.5%と5地域で最も小さい減少幅、下越も-34.3%と減少幅は比較的小さい水準です。
岩船離島(粟島浦村)は関川村と合算17戸で、給与住宅8戸(47.1%)・5地域で唯一給与住宅比率が10%を超える特殊構造です。母数17戸のため、単一市町村構成の佐渡・岩船離島は「地域トレンド」ではなく「単独市町村の実績」として読む必要があります。
この記事では、国土交通省「建築着工統計調査」と総務省「住民基本台帳」をもとに、5地域別の着工合計・変化率・用途構成・1000人あたり着工の地域差を整理します。
※岩船郡(関川村+粟島浦村)は原データが分離できないため、地域集計では関川村(下越)側に17戸計上、岩船離島の粟島浦村は「岩船郡合算のため個別値なし」として扱っています。
この記事でわかること
- R5の県計8,385戸の内訳は下越65.0%・中越24.6%・上越9.5%・佐渡0.9%・岩船離島0.2%で、新潟市4,049戸だけで県計の48.3%・下越の74.3%を占めています
- 下越の地域内平均は419.2戸ですが、新潟市を除いた下越12市町村の平均は116.8戸まで下がり、中越平均171.9戸を下回ります
- 10年変化(H25→R5)は上越-46.2%が5地域で最大の減少、次いで中越-44.2%・下越-34.3%・佐渡-27.5%で、上越3市町村は全て減少(上越-43.8%・糸魚川-63.1%・妙高-29.5%)しています
- 用途構成は下越の貸家比率30.7%が突出(中越18.2%・上越17.9%の約1.7倍)していますが、下越貸家1,672戸の79.4%が新潟市(1,328戸)で、事実上「新潟市の貸家市場」です
- 岩船離島(粟島浦村=合算17戸)は給与住宅比率47.1%と5地域で唯一10%を超える構造ですが、母数17戸の統計変動範囲で構造的解釈は避けるべき水準です
① 5地域別サマリー表|下越5,450戸で県計の65%
R5年度の5地域別着工合計・地域内平均・変化率・1000人あたりをまとめました。
| 地域 | 市町村数 | 着工合計 | 地域内平均 | 10年変化率 | 1000人あたり |
|---|---|---|---|---|---|
| 下越 | 13 | 5,450戸 | 419.2戸 | -34.3% | 4.68戸 |
| 中越 | 12 | 2,063戸 | 171.9戸 | -44.2% | 3.17戸 |
| 上越 | 3 | 798戸 | 266.0戸 | -46.2% | 3.22戸 |
| 佐渡 | 1 | 74戸 | 74戸 | -27.5% | 1.54戸 |
| 岩船離島(合算) | 1 | 17戸※ | 17戸※ | +142.9%※ | 3.40戸※ |
| 県計 | 29 | 8,385戸 | 289戸 | -38.3% | — |
※岩船郡(関川村+粟島浦村)合算値。粟島浦村単独ではありません。
- 下越5,450戸は県計8,385戸の65.0%を占め、県全体の住宅着工が下越に集中しています
- 新潟市4,049戸だけで県計の48.3%・下越の74.3%を占めており、新潟市が下越・県計両方の水準を規定しています
- 中越2,063戸(24.6%)・上越798戸(9.5%)・佐渡74戸(0.9%)・岩船離島17戸(0.2%)と続きます
- 佐渡・岩船離島は単一市町村構成のため、「地域比較」というより「単独市町村の実績」に近い読み方が必要です
▼【グラフ:h8_region_total.png 5地域別の着工合計】

※出典:国土交通省(建築着工統計調査 令和5年度)
② 下越13市町村|新潟市を除くと平均116.8戸
下越13市町村の内訳と、新潟市の存在感を整理します。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 下越合計 | 5,450戸 |
| 下越平均 | 419.2戸 |
| 下越最多 | 新潟市 4,049戸 |
| 下越最少 | 弥彦村 6戸 |
| 域内格差(最多÷最少) | 約675倍 |
| 新潟市の下越シェア | 74.3% |
| 新潟市を除いた12市町村合計 | 1,401戸 |
| 新潟市を除いた12市町村平均 | 116.8戸 |
- 下越13市町村:新潟市・燕市・新発田市・聖籠町・胎内市・弥彦村・関川村・阿賀野市・田上町・五泉市・村上市・加茂市・阿賀町
- 下越の地域内平均419.2戸は新潟市に大きく引きずられています。新潟市を除いた12市町村の平均は116.8戸で、中越平均171.9戸を下回る水準です
- 「下越が最も活発」という印象は、新潟市の政令市効果を切り分けないと成立しない構造です
- 域内格差は新潟市4,049戸・弥彦村6戸で約675倍にのぼり、5地域で最大の内部格差です
※出典:国土交通省(建築着工統計調査 令和5年度)
③ 中越12市町村|持家中心67.3%で構造がまとまる
中越12市町村の内訳と用途構成を整理します。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 中越合計 | 2,063戸 |
| 中越平均 | 171.9戸 |
| 中越最多 | 長岡市 1,093戸 |
| 中越最少 | 出雲崎町・津南町(同率) 各5戸 |
| 域内格差(最多÷最少) | 約219倍 |
| 持家比率 | 67.3% |
| 貸家比率 | 18.2% |
| 分譲比率 | 13.9% |
- 中越12市町村:長岡市・三条市・柏崎市・刈羽村・湯沢町・小千谷市・南魚沼市・見附市・出雲崎町・十日町市・魚沼市・津南町
- 中越は持家比率67.3%と持家中心の構造で、貸家18.2%・分譲13.9%の構成です
- 長岡市1,093戸が中越合計の約53%を占め、次いで三条市308戸・南魚沼市118戸が続きます
- 出雲崎町・津南町の各5戸が地域内最少で、長岡市との差は約219倍です
- 10年変化率は-44.2%と上越に次ぐ減少幅で、長岡市-37.7%・柏崎市-59.4%・南魚沼市-55.1%・十日町市-49.2%等の地域中核市が30〜60%減となっています
▼【グラフ:h8_region_per_capita.png 5地域別の1000人あたり着工数】

※出典:国土交通省(建築着工統計調査 令和5年度)
④ 上越3市|-46.2%で5地域最大の減少
上越3市の内訳を整理します。
| 市町村 | R5着工 | 上越内シェア | 10年変化率 |
|---|---|---|---|
| 上越市 | 643戸 | 80.6% | -43.8% |
| 糸魚川市 | 93戸 | 11.7% | -63.1% |
| 妙高市 | 62戸 | 7.8% | -29.5% |
| 上越合計 | 798戸 | 100% | -46.2% |
- 上越3市の合計変化率-46.2%は5地域で最大の減少幅です
- 上越3市すべてが減少(上越-43.8%・糸魚川-63.1%・妙高-29.5%)で、微増・横ばいの市町村がゼロです
- 上越市が上越合計の80.6%を占め、上越の水準を規定しています
- 糸魚川市の-63.1%は上越3市で最大の減少幅、妙高市の-29.5%は最小の減少幅です
- 用途構成は持家68.0%・貸家17.9%・分譲13.3%で、中越(持家67.3%・貸家18.2%・分譲13.9%)とほぼ同型の持家中心構造です
※出典:国土交通省(建築着工統計調査 令和5年度)
⑤ 佐渡1・岩船離島1|単独市町村構成の解釈注意
佐渡・岩船離島は1市町村構成のため、「地域トレンド」ではなく「単独市町村の実績」として読みます。
| 地域 | 市町村 | R5着工 | 10年変化率 | 1000人あたり | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 佐渡 | 佐渡市 | 74戸 | -27.5% | 1.54戸 | 持家73.0%・分譲5.4%(5地域で分譲比率最低) |
| 岩船離島 | 粟島浦村(合算) | 17戸※ | +142.9%※ | 3.40戸※ | 給与住宅47.1%(5地域で唯一10%超) |
※粟島浦村は関川村との岩船郡合算値。単独データは公表されていません。
- 佐渡74戸は5地域最少(岩船離島合算17戸を除く)で、1000人あたりも1.54戸と5地域最低です
- 佐渡の分譲比率5.4%は5地域で最低、持家73.0%と最も戸建て偏重の構造です
- 10年変化率-27.5%は5地域で最小の減少幅ですが、佐渡は1市のみのため「地域比較」というより「佐渡市単独の実績」として読みます
- 岩船離島(粟島浦村=岩船郡合算値)は給与住宅8戸(47.1%)で5地域唯一の10%超ですが、母数17戸の統計変動範囲内であり、構造的解釈は避ける水準です
- 岩船離島の変化率+142.9%(H25:7戸→R5:17戸)も母数極小のため、単純な増減解釈は困難です
▼【グラフ:h8_region_by_use.png 5地域別の用途構成(持家・貸家・分譲)】

※出典:国土交通省(建築着工統計調査 平成25年度・令和5年度)
⑥ 用途構成の地域差|下越の貸家30.7%は事実上「新潟市の貸家市場」
R5年度の5地域別の用途構成を並べ替えました。
| 地域 | 持家比率 | 貸家比率 | 給与比率 | 分譲比率 |
|---|---|---|---|---|
| 下越 | 52.3% | 30.7% | 0.3% | 16.7% |
| 中越 | 67.3% | 18.2% | 0.6% | 13.9% |
| 上越 | 68.0% | 17.9% | 0.8% | 13.3% |
| 佐渡 | 73.0% | 21.6% | 0.0% | 5.4% |
| 岩船離島(合算) | 52.9% | 0.0% | 47.1% | 0.0% |
- 下越の貸家比率30.7%が突出しており、中越18.2%・上越17.9%の約1.7倍です
- ただし下越貸家1,672戸のうち新潟市が1,328戸(79.4%)を占めており、下越の貸家シェア高は事実上「新潟市の貸家市場」の反映です
- 新潟市を除いた下越12市町村の貸家合計は344戸で、比率換算すると約24.6%と中越・上越水準に近づきます
- 中越(持家67.3%・貸家18.2%・分譲13.9%)と上越(持家68.0%・貸家17.9%・分譲13.3%)はほぼ同型の持家中心構造です
- 分譲は下越16.7%が最も厚く、中越13.9%・上越13.3%と続きます。新潟市の分譲752戸・新発田市の分譲82戸等が下越の分譲比率を押し上げています
- 佐渡は持家73.0%と最も戸建て偏重、分譲5.4%は5地域で最低です
- 岩船離島(粟島浦村=合算値)は給与住宅47.1%で5地域唯一の10%超ですが、母数17戸の統計変動範囲です
※出典:国土交通省(建築着工統計調査 令和5年度)
⑦ 意外な観察4選
観察1:下越の平均は新潟市が引き上げているだけで、除くと中越を下回る
下越の地域内平均419.2戸は5地域で最大ですが、新潟市4,049戸を除いた下越12市町村の平均は116.8戸まで下がります。
- 中越平均171.9戸を下回る
- 「下越が最も活発」は新潟市抜きでは成立しない
- 下越の実像は「新潟市+比較的小規模な12市町村」の二層構造
観察2:上越の変化率が5地域で最大の減少(-46.2%)
上越3市町村(上越-43.8%・糸魚川-63.1%・妙高-29.5%)はすべて大幅減少しており、中越-44.2%を上回る減少幅です。
- 上越には「微増・横ばい」の市町村がゼロ
- 3市町村構成のため、内訳が明快な一方、下振れも顕在化しやすい
- 糸魚川市-63.1%が上越3市の中で最大の減少幅
観察3:下越の貸家比率30.7%は事実上「新潟市の貸家市場」
下越貸家1,672戸のうち新潟市が1,328戸(79.4%)を占めます。
- 新潟市を除いた下越12市町村の貸家比率は約24.6%(中越18.2%・上越17.9%に近い水準)
- 「下越は貸家中心」という説明は新潟市の政令市効果を切り分けないと成立しない
- 下越12市町村ベースで見ると、下越・中越・上越の用途構成は近づく
観察4:岩船離島の給与住宅比率47.1%は5地域で唯一の10%超
粟島浦村(岩船郡合算17戸)は給与住宅8戸で47.1%と、5地域で唯一給与住宅比率が10%を超えます。
- 他の4地域は下越0.3%・中越0.6%・上越0.8%・佐渡0.0%とすべて1%未満
- ただし母数17戸の統計変動範囲内であり、構造的解釈は避けるべき水準
- 給与住宅は事業所が従業員向けに建設する社宅等で、県全体で1%未満の希少カテゴリ
⑧ データの見方・注意点
着工数≠住宅需要ではありません
建築着工統計の着工戸数は「建設が始まった住宅の数(供給側の数字)」であり、その地域の住宅需要の強弱を直接示すものではありません。「下越が5,450戸で最多=下越で最も住宅需要が強い」ではなく、「下越で新築の着工が最も多く発生した」までを言える範囲です。既存の中古住宅・空き家の流通は着工データからはわかりません。
岩船郡(関川村・粟島浦村)は合算表記です
国土交通省の原データでは、関川村と粟島浦村の着工数が郡単位で公表されており、村単位に分離できません。この記事の地域集計では、下越の関川村側に17戸計上し、岩船離島の粟島浦村は「岩船郡合算のため個別値なし」として扱っています。粟島浦村単独の着工実績はデータからは特定できません。
小規模市町村の変化率は大きく振れます
年間の着工数が10〜20戸前後の小規模市町村(湯沢町15戸・弥彦村6戸・出雲崎町5戸・津南町5戸・岩船郡合算17戸)では、集合住宅1棟の完成タイミングだけで変化率が数十〜数百パーセント動きます。岩船離島合算の+142.9%(7戸→17戸)や佐渡+100%(分譲2戸→4戸)等は絶対戸数が小さいため、変化率だけで市場動向を読むのは難しい水準です。
順位≠豊かさではありません
「着工数が多い/少ない」「変化率が大きい/小さい」という順位は、住みやすさや豊かさを直接示す指標ではありません。人口規模・世帯構成・持家率・地価水準・産業構造など複数の要素が反映された結果としてお読みください。
まとめ
新潟5地域の住宅着工構造|要点
- R5の県計8,385戸の内訳は下越65.0%・中越24.6%・上越9.5%・佐渡0.9%・岩船離島0.2%で、新潟市4,049戸だけで県計の48.3%を占めています
- 下越の地域内平均419.2戸は新潟市に大きく引きずられており、新潟市を除いた下越12市町村の平均は116.8戸で中越平均171.9戸を下回ります
- 10年変化率は上越-46.2%が5地域で最大の減少(上越市-43.8%・糸魚川市-63.1%・妙高市-29.5%)、次いで中越-44.2%・下越-34.3%・佐渡-27.5%です
- 用途構成は下越の貸家比率30.7%が突出していますが、下越貸家の79.4%が新潟市の1,328戸で、事実上「新潟市の貸家市場」の反映です
- 中越(持家67.3%)と上越(持家68.0%)はほぼ同型の持家中心構造、佐渡は持家73.0%・分譲5.4%と最も戸建て偏重、岩船離島(合算17戸)は給与住宅47.1%の特殊構造です
出典
- 新設住宅着工戸数(市町村別・用途別):
国土交通省(建築着工統計調査 平成25年度・令和5年度) - 人口(1000人あたり・地域集計用):
総務省(住民基本台帳に基づく人口 令和7年)
データ基準日:令和5年度(2023年度)
次回更新推奨:令和6年度データ公表後

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