妙高市の製造業1人あたり付加価値額は2,146万円/人で、県平均(1,188万円/人)の約1.8倍にのぼります。
製造品出荷額の大きさ(量)と、従業者1人あたりが生み出す付加価値(質)は必ずしも一致しません。
出荷額が県内1位の新潟市は1人あたり付加価値額で県内10位にとどまり、出荷額12位の妙高市が付加価値で1位という逆転現象が起きています。この記事では、工業統計調査2022年のデータをもとに、新潟県29市町村(粟島浦村は製造業事業所なしのため除外)の製造業の「質」を比較します。
この記事でわかること
- 1人あたり付加価値額1位は妙高市(2,146万円/人)で、最下位の田上町(488万円/人)の約4.4倍の格差がある
- 県平均は1,188万円/人で、上位10市町村が県平均を上回っている
- 付加価値率(付加価値額÷出荷額)が高い市町村は技術・知識集約型製造業が中心で、関川村(59.9%)・阿賀町(56.2%)・妙高市(55.4%)が上位に入る
- 製造品出荷額の規模(量)と1人あたり付加価値額(質)の相関は低く、「小規模でも高付加価値」な製造業が存在する
- 粟島浦村は製造業事業所なしのためランキング外
1人あたり付加価値額ランキング(2022年・29市町村)
| 順位 | 市町村名 | 製造業従業者数 | 製造品出荷額 | 付加価値額 | 付加価値率 | 1人あたり付加価値額 | 出荷額順位 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 妙高市 | 3,506人 | 約1,358億円 | 約752億円 | 55.4% | 2,146万円 | 12位 |
| 2 | 胎内市 | 3,605人 | 約1,313億円 | 約706億円 | 53.8% | 1,959万円 | 13位 |
| 3 | 上越市 | 16,008人 | 約5,901億円 | 約2,878億円 | 48.8% | 1,798万円 | 3位 |
| 4 | 阿賀野市 | 4,714人 | 約1,412億円 | 約715億円 | 50.6% | 1,516万円 | 11位 |
| 5 | 関川村 | 306人 | 約77億円 | 約46億円 | 59.9% | 1,498万円 | 25位 |
| 6 | 聖籠町 | 5,285人 | 約1,930億円 | 約789億円 | 40.9% | 1,493万円 | 7位 |
| 7 | 五泉市 | 5,162人 | 約1,306億円 | 約719億円 | 55.0% | 1,392万円 | 14位 |
| 8 | 弥彦村 | 1,187人 | 約338億円 | 約159億円 | 47.2% | 1,341万円 | 21位 |
| 9 | 糸魚川市 | 3,928人 | 約1,469億円 | 約503億円 | 34.3% | 1,281万円 | 10位 |
| 10 | 新潟市 | 35,970人 | 約1兆1,851億円 | 約4,553億円 | 38.4% | 1,266万円 | 1位 |
| 11 | 柏崎市 | 7,573人 | 約2,015億円 | 約893億円 | 44.3% | 1,179万円 | 6位 |
| 12 | 見附市 | 4,108人 | 約1,645億円 | 約464億円 | 28.2% | 1,128万円 | 8位 |
| 13 | 新発田市 | 6,724人 | 約1,642億円 | 約740億円 | 45.1% | 1,101万円 | 9位 |
| 14 | 湯沢町 | 87人 | 約19億円 | 約9億円 | 47.9% | 1,044万円 | 29位 |
| 15 | 長岡市 | 25,045人 | 約6,571億円 | 約2,564億円 | 39.0% | 1,024万円 | 2位 |
| 16 | 燕市 | 15,945人 | 約4,457億円 | 約1,615億円 | 36.2% | 1,013万円 | 4位 |
| 17 | 小千谷市 | 6,042人 | 約1,150億円 | 約544億円 | 47.3% | 901万円 | 15位 |
| 18 | 三条市 | 13,241人 | 約2,963億円 | 約1,172億円 | 39.5% | 885万円 | 5位 |
| 19 | 南魚沼市 | 3,662人 | 約815億円 | 約313億円 | 38.4% | 855万円 | 16位 |
| 20 | 魚沼市 | 2,866人 | 約598億円 | 約241億円 | 40.3% | 841万円 | 19位 |
| 21 | 出雲崎町 | 380人 | 約67億円 | 約31億円 | 45.8% | 807万円 | 26位 |
| 22 | 加茂市 | 2,633人 | 約624億円 | 約212億円 | 33.9% | 804万円 | 18位 |
| 23 | 刈羽村 | 299人 | 約44億円 | 約23億円 | 52.7% | 774万円 | 28位 |
| 24 | 津南町 | 725人 | 約127億円 | 約52億円 | 40.4% | 710万円 | 24位 |
| 25 | 村上市 | 4,571人 | 約763億円 | 約316億円 | 41.3% | 690万円 | 17位 |
| 26 | 佐渡市 | 1,098人 | 約139億円 | 約66億円 | 47.7% | 604万円 | 23位 |
| 27 | 阿賀町 | 488人 | 約46億円 | 約26億円 | 56.2% | 528万円 | 27位 |
| 28 | 十日町市 | 3,170人 | 約392億円 | 約166億円 | 42.4% | 524万円 | 20位 |
| 29 | 田上町 | 1,174人 | 約160億円 | 約57億円 | 35.8% | 488万円 | 22位 |
| — | 粟島浦村 | — | — | — | — | — | 30位 |
県平均(29市町村合計):製造業従業者約17万9,502人、付加価値額合計約2兆1,323億円 → 1人あたり付加価値額 約1,188万円/人
※出典:経済産業省(工業統計調査 令和4年)※従業者4人以上の事業所が対象
▼【グラフ:R8_製造業質ランキング.png 新潟県29市町村 1人あたり製造業付加価値額ランキング(2022年)】

上位グループの分析(1〜5位)
上位5市町村はいずれも付加価値率が高く、技術・知識集約型の製造業が中心とみられます。
1位の妙高市(2,146万円/人・付加価値率55.4%)は、出荷額は12位ながら付加価値率・1人あたり付加価値額ともに県内トップクラスです。精密機械・電子部品など高技術分野の製造業メーカーが立地しており、製造1人あたりの生産性が非常に高い水準にあるとみられます。県平均(1,188万円)の約1.8倍という数値は、製造業の「質」という点で際立った特徴です。
2位の胎内市(1,959万円/人・付加価値率53.8%)も高い付加価値率を持ちます。精密機械・産業機械など技術集約型メーカーの立地が背景にあるとみられます。
3位の上越市(1,798万円/人・付加価値率48.8%)は、出荷額3位(約5,901億円)と規模も大きく、かつ付加価値率も高い「規模と質を両立する市」です。電機・精密機械メーカーの集積が高付加価値を支えているとみられます。
5位の関川村(1,498万円/人・付加価値率59.9%)は、製造業従業者わずか306人・出荷額約77億円(25位)と小規模ながら、付加価値率が59.9%と県内1位です。特定分野の専門製造業が非常に高い付加価値を生み出しているとみられます。
付加価値率ランキングの特徴
付加価値率(付加価値額÷出荷額)は原材料費・外注費の占める割合の逆数とも言え、技術・知識集約度の代理指標として機能します。
| 付加価値率上位 | 市町村 | 付加価値率 | 産業的特徴 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 関川村 | 59.9% | 専門製造業(小規模・高付加価値) |
| 2位 | 阿賀町 | 56.2% | 専門製造業(小規模・高付加価値) |
| 3位 | 妙高市 | 55.4% | 精密機械・電子部品 |
| 4位 | 五泉市 | 55.0% | ニット・繊維・機械 |
| 5位 | 胎内市 | 53.8% | 精密機械・産業機械 |
一方、付加価値率が低い市町村は素材加工・食品加工・部品加工など原材料費の比率が高い業種が中心のとみられます。
| 付加価値率下位 | 市町村 | 付加価値率 | 産業的特徴 |
|---|---|---|---|
| 29位 | 見附市 | 28.2% | 繊維・ニット・部品加工 |
| 28位 | 加茂市 | 33.9% | 木工・繊維・金属 |
| 27位 | 糸魚川市 | 34.3% | セメント・石材・金属 |
| 26位 | 田上町 | 35.8% | 食品・木工 |
| 25位 | 燕市 | 36.2% | 金属洋食器・キッチン用品 |
「規模と質の逆転」現象
注目すべきは、出荷額ランキングと付加価値額ランキングの「逆転」が複数の市町村で見られることです。
- 新潟市:出荷額1位 → 付加価値額10位(大規模だが付加価値率は38.4%)
- 妙高市:出荷額12位 → 付加価値額1位(中規模だが付加価値率55.4%)
- 三条市:出荷額5位 → 付加価値額18位(大規模だが付加価値率39.5%)
- 関川村:出荷額25位 → 付加価値額5位(小規模だが付加価値率59.9%)
これは、製造業の評価には「出荷額(量)」と「付加価値(質)」の両方の視点が必要であることを示しています。
下位グループの分析
最下位の田上町(488万円/人)は、付加価値率35.8%と中程度ですが、1人あたり出荷額(1,365万円/人)に比して付加価値額が低い水準にとどまっています。食品・木工系の製造業が中心とみられます。
28位の十日町市(524万円/人)は繊維・ニット産業が主力で、原材料費・縫製外注費の割合が高い業種特性が付加価値率に反映されているとみられます。
27位の阿賀町(528万円/人)は付加価値率56.2%と非常に高いにもかかわらず、1人あたり付加価値額は下位に位置しています。これは従業者数(488人)が少ない一方で出荷額・付加価値額の絶対値が小さいためで、個別事業所の規模の問題とみられます。
データの見方・注意点
工業統計は従業者4人以上の製造事業所が対象です
製造品出荷額・付加価値額は「従業者4人以上の製造業事業所」のみが対象です。燕市・三条市のような中小工房・家内工業が多い地域では、統計に含まれない事業所も多数存在します。
粟島浦村は製造業事業所なしのため除外
29市町村を対象とするランキングです。
付加価値額は「製造業付加価値額」で、経済全体の付加価値とは異なります
製造業以外のサービス業・農業・建設業等の付加価値は含まれません。
まとめ
- 1人あたり付加価値額は妙高市(2,146万円/人)が県内1位で、県平均(1,188万円/人)の約1.8倍の水準
- 出荷額(量)と付加価値(質)の順位は大きく異なる市町村が多く、「規模が大きい=高付加価値」とは限らない
- 付加価値率が高い市町村(関川村59.9%・阿賀町56.2%・妙高市55.4%)は技術・知識集約型の専門製造業が中心とみられる
- 付加価値率が低い市町村(見附市28.2%・加茂市33.9%・糸魚川市34.3%)は素材・食品・繊維など原材料費比率の高い製造業が中心とみられる
- 就職・転職先として製造業賃金水準を検討する際は、出荷額だけでなく付加価値額のデータも参考になる
出典
- 製造品出荷額・付加価値額:経済産業省(工業統計調査 令和4年)
データ基準日:2022年(令和4年)工業統計調査
次回更新推奨:2023年(令和5年)工業統計データ公表後

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