新潟県30市町村 公債費・財政健全化ランキング【令和5年度】借金が重い市はどこか

データ

この記事でわかること:

  • 新潟県内30市町村の一人当たり公債費ランキング(返済負担の重さ)
  • 歳出に占める公債費比率:返済が財政を圧迫している自治体
  • 将来負担比率:中長期の財政リスクが高い市町村と低い市町村
  • 経常収支比率:財政の硬直度ランキング(身動きが取れる市・取れない市)
  • 「財政力が低い × 将来負担が重い」という危険な組み合わせの自治体

① 要点まとめ

  • 一人当たり公債費1位は粟島浦村(297,000円)。人口312人の離島で一人当たりの返済額が突出して高い。財政力指数は0.09(30位)と最下位水準で、返済を支える税収基盤がほぼない
  • 最下位(返済負担最小)は刈羽村(711円)。原子力発電所の固定資産税で財政が潤沢なため、自治体の借入がほぼゼロ。経常収支比率71.2%も30市町村中最低(余裕が最大)
  • 将来負担比率1位(最もリスクが高い)は佐渡市(130.2%)。財政力0.24と低い中で過去の大型投資が将来世代への負担として残っている。2位は新潟市(123%)でインフラ規模の大きさが数字に反映
  • 経常収支比率最高(最も財政が硬直)は胎内市(98.6%)。歳出のほぼすべてが義務的経費に固定されており、新規事業に回せる財源がほぼない状態

② 公債費と財政健全化指標の読み方

自治体の「借金」に関連する指標は複数ある。この記事では以下の4つを使う。

公債費(こうさいひ):地方債(自治体の借入)の元金と利子の返済額。歳出における借金返済の総額を示す。単位は千円(千万円ではない)。

一人当たり公債費:公債費÷人口で計算した、住民1人あたりの返済額。人口が少ない小規模自治体ほど大きくなりやすい。

歳出に占める公債費比率:公債費÷歳出総額。歳出のうち返済に充てる割合が高いほど、新規の政策・施設整備に回せる財源が少ない。

将来負担比率:現在の借入残高・債務負担行為・退職給付引当金等を合計し、標準財政規模(自治体の平均的な歳入)で割った比率。高いほど将来世代が負担する財政リスクが大きい。総務省の早期健全化基準は350%。

経常収支比率:人件費・扶助費・公債費など義務的経費が、毎年繰り返し使える経常的収入(地方税・地方交付税等)に占める割合。高いほど財政が硬直していて新規事業に回せる余裕がない。一般的に80%台が適正、90%超は要注意水準。


③ 一人当たり公債費ランキング(全30市町村)

順位市区町村一人当たり公債費歳出比率将来負担比率財政力指数
1位粟島浦村297,000円6.5%0.09
2位阿賀町195,948円12.8%65.2%0.20
3位関川村132,609円9.0%16.7%0.21
4位佐渡市120,578円11.8%130.2%0.24
5位糸魚川市118,845円16.8%50.7%0.47
6位魚沼市108,577円10.4%7.1%0.28
7位十日町市106,811円14.3%92.7%0.33
8位出雲崎町104,160円11.0%0.22
9位津南町84,929円9.1%23.4%0.25
10位胎内市76,317円10.6%110.6%0.44
11位上越市73,631円12.9%58.6%0.57
12位三条市73,185円12.7%79.3%0.54
13位南魚沼市72,760円9.5%0.41
14位村上市68,191円9.2%75.6%0.34
15位新潟市65,267円11.7%123.0%0.65
16位柏崎市61,404円9.9%6.6%0.65
17位妙高市61,233円8.1%0.42
18位燕市59,065円10.2%86.5%0.60
19位長岡市58,852円11.0%73.1%0.59
20位五泉市55,114円11.0%46.4%0.43
21位阿賀野市54,537円9.1%58.4%0.42
22位湯沢町54,416円5.3%28.8%0.90
23位小千谷市54,348円8.2%22.3%0.52
24位弥彦村52,627円7.1%51.3%0.38
25位新発田市50,091円9.5%63.3%0.48
26位見附市45,890円9.4%80.9%0.53
27位田上町42,658円9.2%17.0%0.36
28位加茂市38,267円7.0%83.6%0.40
29位聖籠町26,244円4.3%2.1%1.07
30位刈羽村711円0.0%1.39

※ 将来負担比率「—」は算定対象外または公表値なし(財政規模・負担額の関係で基準値に達しない場合を含む)。


④ 粟島浦村と刈羽村:両極端の構造

一人当たり公債費の上位・下位は、まったく異なる事情から生まれている。

1位・粟島浦村(297,000円)

人口312人の離島で、島のインフラ整備(港・道路・医療施設・学校)にかかった費用が積み上がっている。住民数が極端に少ないため、自治体全体の返済額を頭数で割ると一人当たりが突出して大きくなる。

問題は税収基盤との関係だ。財政力指数は0.09(30位)で、自前の税収でまかなえる行政コストはわずか9%。公債費の返済財源の大半は国の地方交付税に依存している。「借金を抱えたまま税収もない」という構造的な脆弱さが数字に表れている。

30位・刈羽村(711円)

原子力発電所の固定資産税が年間約29億円(28.87億円)入る刈羽村は、新規借入をほとんどする必要がない。施設整備・インフラ維持の費用を自前の税収でまかなえるため、地方債残高が極めて小さい。一人当たり公債費711円は事実上ゼロと言える水準で、経常収支比率71.2%(30市町村中最低=最も余裕がある)という数字もこの体制から生まれる。


⑤ 歳出に占める公債費比率:返済が重い自治体ランキング

一人当たりではなく「歳出の何割を返済に充てているか」を見ると、財政の圧迫度がより明確になる。

順位市区町村歳出比率一人当たり公債費財政力
1位糸魚川市16.8%118,845円0.47
2位十日町市14.3%106,811円0.33
3位阿賀町12.9%195,948円0.20
4位上越市12.9%73,631円0.57
5位三条市12.7%73,185円0.54
6位佐渡市11.8%120,578円0.24
7位新潟市11.7%65,267円0.65
8位出雲崎町11.0%104,160円0.22
8位長岡市11.0%58,852円0.59
8位五泉市11.0%55,114円0.43
29位聖籠町4.3%26,244円1.07
30位刈羽村0.0%711円1.39

糸魚川市(16.8%)は歳出の6分の1以上を返済に充てている。鉱業・採石業の産地として道路・港湾などの産業インフラへの投資が多かった経緯に加え、糸魚川駅北口再開発(2016年大火後の復興事業)の財政負担が影響していると考えられる。財政力指数は0.47(13位)とやや低水準で、返済負担と税収基盤のバランスが課題となっている。

十日町市(14.3%)は日本有数の豪雪地帯における除雪インフラ、越後妻有アートトリエンナーレ関連施設、農村整備事業等の積み上げが公債費を押し上げている。財政力指数は0.33(23位)と低い。

一方、湯沢町(5.3%)・聖籠町(4.3%)は財政力が高く、借入を抑えられているため返済負担も小さい。


⑥ 将来負担比率ランキング:中長期の財政リスク

将来負担比率は「現在抱えている負債が、年間の財政規模の何倍か」を示す。高いほど将来世代への負担が大きい。

順位市区町村将来負担比率財政力指数評価
1位(最大)佐渡市130.2%0.24財政力低×負担大:要注意
2位新潟市123.0%0.65規模の大きさによる構造的負担
3位胎内市110.6%0.44財政力中×負担大:注視が必要
4位十日町市92.7%0.33財政力低×負担大:要注意
5位燕市86.5%0.60製造業都市でも負担あり
6位加茂市83.6%0.40
7位見附市80.9%0.53
8位三条市79.3%0.54
9位村上市75.6%0.34
10位長岡市73.1%0.59大都市の構造的規模
23位魚沼市7.1%0.28財政力低だが負担も小さい
24位柏崎市6.6%0.65原発周辺の財政力を背景に健全
25位(最小)聖籠町2.1%1.07不交付団体。最も健全

※ 粟島浦村・刈羽村・出雲崎町・南魚沼市・妙高市は算定対象外または公表値なし。

「財政力が低いのに将来負担が重い」という二重苦

財政的に最も厳しい状況にあるのは、財政力が低い(交付税依存度が高い)のに将来負担比率が高い市町村だ。

佐渡市(財政力0.24 × 将来負担130.2%)はこの典型で、島嶼部の特性上インフラ整備(港湾・道路・医療施設)に多額の投資が必要だったにもかかわらず、人口減少・産業縮小で財政力は低下している。年間の税収で現在の負債の1.3倍分の財政負担を抱えている計算になる。

胎内市(財政力0.44 × 将来負担110.6%)は農業・製造業中心の自治体で、大規模酪農への農業整備投資、道路・農道・排水整備等の積み上げが将来負担に反映されている。

これとは対照的に、聖籠町(財政力1.07 × 将来負担2.1%)は工業団地の固定資産税で豊富な税収を持ちながら、借入を最小限に抑えた財政運営をしている。自立型の財政構造の理想的なモデルといえる。


⑦ 経常収支比率:財政の「硬直度」ランキング

経常収支比率が高い自治体は、毎年の収入がほぼすべて義務的経費(人件費・扶助費・公債費)に消える。新規施設の建設・子育て支援の拡充・産業振興などに使える「自由な財源」が乏しく、財政運営の選択肢が狭い。

順位市区町村経常収支比率財政力指数評価
1位(最硬直)胎内市98.6%0.44新規事業の余地がほぼない
2位糸魚川市96.5%0.47
2位加茂市96.5%0.40
4位十日町市95.7%0.33
5位佐渡市95.3%0.24
6位三条市95.1%0.54
7位湯沢町94.9%0.90リゾート税収でも硬直
7位見附市94.9%0.53
9位新潟市94.2%0.65大都市の義務的経費の重さ
10位燕市93.0%0.60
27位粟島浦村83.9%0.09交付税依存だが余裕あり
27位田上町83.9%0.36
29位弥彦村78.2%0.38
30位(最余裕)刈羽村71.2%1.39圧倒的な財政的自由度

胎内市(98.6%)は経常収支比率・将来負担比率ともに高く、財政の硬直度と将来リスクが複合している。農業整備投資と公債費の積み上げに加えて、高齢化による扶助費(社会保障給付)の増加が進んでいる。財政力指数は0.44(14位)と中程度で、交付税への依存度も高い。

湯沢町(94.9%)は財政力指数0.90と高水準だが、経常収支比率も94.9%と硬直している。リゾートマンションからの固定資産税収入が大きくても、観光施設の維持管理費・公債費が歳出を圧迫するため「豊かな税収があっても使えない」状態になっている。


⑧ 財政健全性の総合評価

4つの指標を組み合わせると、新潟県30市町村は大きく3つのパターンに分けられる。

「低リスク型」(借金少ない × 余裕あり)

刈羽村・聖籠町が該当する。大型施設の固定資産税で豊富な税収を持ち、借入が少なく、経常収支比率も低い。柏崎市も将来負担比率6.6%・公債費比率9.9%と比較的健全。

「構造的重荷型」(財政力低い × 将来負担大)

佐渡市・胎内市・十日町市が該当する。人口減少・過疎化が進む中で過去のインフラ整備の負債を抱えており、将来の返済財源が不確実。財政力の低さから国の財政支援(交付税・国庫補助)への依存度が高い。

「規模負担型」(都市の大きさゆえの負債)

新潟市・長岡市・上越市が該当する。将来負担比率は高い(新潟市123%・長岡市73.1%・上越市58.6%)ものの、財政力指数は0.57〜0.65と中〜高水準。都市規模のインフラ維持に必要な投資が負債になっているが、税収基盤がある程度の返済能力を担保している。


まとめ

指標最大最小
一人当たり公債費粟島浦村 297,000円刈羽村 711円
歳出に占める公債費比率糸魚川市 16.8%刈羽村 0.0%
将来負担比率佐渡市 130.2%聖籠町 2.1%
経常収支比率(硬直度)胎内市 98.6%刈羽村 71.2%
  • 刈羽村は4指標すべてで最も健全な側にある。原発の固定資産税という特殊な税収構造が財政全体を支えている
  • 佐渡市・胎内市は「財政力が低いのに将来負担が重い」二重苦の状態にある。人口減少が続く中での財政再建が課題
  • 一人当たり公債費の格差(粟島浦村297,000円 vs 刈羽村711円)は418倍。財政力指数の7.3倍格差を大きく上回り、人口規模・施設規模・税収構造の違いが極端な形で現れている
  • 経常収支比率が90%超の市町村が30市町村中16市町村に及ぶ。大半の自治体で「義務的支出が収入のほぼ全額を占め、新たな政策投資が難しい」状況が続いている

出典・情報基準日

データ出典基準日
公債費・歳出総額・経常収支比率総務省「令和5年度 市町村別決算状況調」令和5年度(2023年度)決算
将来負担比率総務省「令和5年度 健全化判断比率・資金不足比率の状況」令和5年度決算
人口総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」2025年1月1日現在

次回更新推奨:2026年(令和8年)の決算公表後(2026年11月頃)

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