新潟県30市町村 産業構造ランキング【令和3年】製造業・観光・農業型、あなたの市はどのタイプか

この記事でわかること:

  • 新潟県内30市町村の産業別事業所数の構成比と、市町村ごとの「産業タイプ」分類
  • 製造業比率ランキング(燕市33%が突出している背景)
  • 観光・宿泊飲食業型の市町村と、その財政的特徴
  • 医療福祉が「最大産業」になっている市町村の多さ

① 要点まとめ

  • 製造業比率1位は燕市(33.5%)。全産業5,092事業所のうち1,708が製造業。金属洋食器・調理器具の産地として全国的に集積度が突出している
  • 観光・宿泊飲食業比率1位は粟島浦村(52.2%)、2位は湯沢町(41.3%)。小規模離島・スキーリゾートは事業所の半数近くが宿泊飲食関連という特異な構造
  • 多くの市町村で「卸小売業」か「医療福祉」が最大産業を占める。農業産出や製造業で地域が「稼いでいる」一方で、実際の事業所の大多数は生活サービス系産業
  • 農林漁業事業所比率が最も高いのは関川村(8.9%)。農業を主な生業とする農業型市町村でも、農業系の事業所は全体の1割未満にとどまる

② 産業別事業所数の読み方

経済センサス活動調査(2021年)では、全国の事業所を産業大分類別に集計している。この記事では以下の9区分を使って各市町村の産業構成を分析する。

  • 農林漁業:農家・漁業者(法人・個人事業)
  • 建設業:工務店・土木・設備工事
  • 製造業:食品・金属・繊維・機械など工場・製造所
  • 情報通信業:IT・ソフトウェア・放送
  • 卸小売業:スーパー・コンビニ・卸売業者
  • 宿泊飲食サービス業:ホテル・旅館・飲食店
  • 生活関連サービス・娯楽業:美容院・クリーニング・レジャー施設
  • 医療福祉:病院・診療所・介護施設・保育所
  • 全産業:上記+教育・公務等を含む全事業所数

③ 製造業比率ランキング

製造業比率が高い市町村は「ものづくり産地」または「工場誘致型」の性格を持つ。

順位市区町村製造業比率製造業事業所数 / 全事業所数主な製品・産業
1位燕市33.5%1,708 / 5,092金属洋食器・調理器具・磨き屋シンジケート
2位三条市19.9%1,131 / 5,683金物(鍛冶)・工具・刃物
3位弥彦村19.5%74 / 380小規模製造業(金属関連が多い)
4位田上町18.6%78 / 419食品加工・金属部品
5位加茂市16.5%210 / 1,271繊維(ニット)・機械
6位小千谷市13.9%237 / 1,711繊維(ちぢみ)・機械
7位見附市13.7%219 / 1,601ニット・繊維(見附ニット産地)
8位十日町市11.6%336 / 2,906ちぢみ織り・繊維加工・食品
9位聖籠町11.4%74 / 647工業団地。化学・金属
10位五泉市10.6%223 / 2,094ニット・繊維・食品加工
11位魚沼市10.4%204 / 1,955食品(コシヒカリ加工)・木材
12位胎内市10.2%129 / 1,268食品加工(農産物)・製造業
13位長岡市10.1%1,275 / 12,595機械・化学・IT関連製造
14位刈羽村10.0%21 / 211小規模製造業
15位阿賀野市9.8%175 / 1,783食品加工・金属
29位湯沢町1.6%12 / 743ほぼ製造業なし。リゾート依存
30位粟島浦村0.0%0 / 67製造業事業所ゼロ

「燕三条」という産業集積のすごさ

燕市(33.5%)と三条市(19.9%)は、隣接する2市で日本有数の金属加工産地「燕三条」を形成している。この2市の製造業事業所数を合計すると2,839事業所。新潟市の製造業事業所数(1,851)を大きく上回る。

燕市の金属洋食器(フォーク・ナイフ・スプーン)は国内シェアの9割超、三条市の作業工具(プライヤー・スパナ)も国内主要産地のひとつ。OEM製造で世界規模のブランドに供給している企業が集積している。

加茂市・見附市・小千谷市・十日町市はニット・ちぢみ織りなどの繊維産業が製造業の大きな部分を占める。新潟の繊維産業は「小千谷ちぢみ(重要無形文化財)」「十日町ちぢみ」として歴史的な産地ブランドを持つ。


④ 宿泊飲食業比率ランキング:観光・リゾート型の市町村

順位市区町村宿泊飲食比率宿泊飲食事業所数 / 全事業所数主な観光資源
1位粟島浦村52.2%35 / 67離島・釣り・自然観光
2位湯沢町41.3%307 / 743苗場・かぐら・GALA湯沢スキー場
3位妙高市20.5%343 / 1,672赤倉・関温泉・妙高高原スキー場
4位南魚沼市13.7%458 / 3,334浦佐温泉・六日町・湯沢隣接
5位弥彦村12.6%48 / 380弥彦神社・参道飲食
6位柏崎市12.4%463 / 3,744海水浴・温泉(松雲山荘周辺)
7位魚沼市12.2%239 / 1,955奥只見・大湯温泉・スキー場
8位佐渡市12.1%431 / 3,560金山・おけさ・自然観光
9位十日町市11.3%327 / 2,906越後妻有アートトリエンナーレ・温泉
10位新発田市11.2%455 / 4,070城下町・月岡温泉

粟島浦村は人口312人の離島で、事業所67のうち35が宿泊飲食。観光業なしに成り立たない産業構造。

湯沢町は全国屈指のスキーリゾート地で、首都圏から2時間圏内というアクセスの良さから越後湯沢・苗場・かぐらなどのスキー場が集積。冬季観光最盛期には人口(8,268人)の何倍もの来訪者が訪れる。

妙高市は「日本有数のスキーリゾート集積地」として、赤倉・関・燕温泉・笹ヶ峰など多様な温泉・スキー施設が連なる。事業所343のうち20%超が宿泊飲食という数字はその集積度を示す。


⑤ 産業タイプ別の市町村分類

以上のデータを総合すると、新潟県30市町村は以下の産業タイプに分類できる。

製造業集積型
燕市・三条市・加茂市・見附市・小千谷市・田上町・弥彦村

→ 製造業事業所比率13%超。歴史的な産地ブランドを持つ市町村が多い。雇用の中心が工場で、熟練技術者の所得水準が比較的高い。

観光・リゾート型
湯沢町・妙高市・粟島浦村・佐渡市

→ 宿泊飲食業比率が高く、季節変動が大きい。観光客の消費が地域経済を支える。固定資産税(リゾートマンション・ホテル)が一定の財政収入になる。

農業・畜産型(農業産出額依存型)
村上市・新発田市・胎内市・津南町・阿賀町

→ 農林漁業系事業所比率が高いわけではないが(農業は個人農家が多く事業所としてカウントされにくい)、農業産出額の対人口比が高い。地域経済の実態として農業が主軸。

都市型(卸小売・医療福祉中心)
新潟市・長岡市・上越市

→ 事業所数が多く、卸小売・医療福祉・情報通信など多様な産業が共存。特定産業への依存度が低く、雇用の多様性が高い。

特定施設依存型
刈羽村(原発)・聖籠町(工業団地)

→ 事業所数は少ないが、大型施設の固定資産税で財政力が突出。地域産業の多様性は限られる。


⑥ 医療福祉が「最大の産業」になりつつある現実

製造業・観光・農業が目立つ一方で、新潟市・上越市・長岡市など人口の多い都市では医療福祉の事業所数が全産業で最大か2位になっている。

市区町村医療福祉事業所数全事業所数に占める比率
新潟市3,1579.5%
上越市8038.6%
長岡市9457.5%
見附市1408.7%
阿賀野市1518.5%

高齢化が進む新潟県では、医療・介護・福祉の需要が産業構造を変えつつある。「製造業の産地」として知られる燕市でも医療福祉が304事業所(5.9%)を占め、人口減少が続く中で医療福祉が地域の重要な雇用の場になっている。

農業・製造業の稼ぎ手が減り、高齢者の割合が増えるほど医療福祉の事業所数・就業者数が相対的に増える。これは新潟に限らず、地方都市が直面する産業構造変化の典型的な姿だ。


まとめ

指標1位特記
製造業比率燕市 33.5%三条市(19.9%)と合わせた「燕三条」が全国的な製造集積
宿泊飲食業比率粟島浦村 52.2%湯沢町(41.3%)・妙高市(20.5%)が観光型の代表
農林漁業事業所比率関川村 8.9%農業の実態は事業所カウントより「農業産出額」で見るべき
  • 新潟県の産業は「製造業型・観光型・農業型・都市型・特定施設依存型」の5つに大別できる
  • 製造業の集積は燕三条に突出しており、全国的な競争力を持つ
  • 高齢化の進行で医療福祉が多くの市町村で主要産業化しつつある

出典・情報基準日

データ出典基準日
産業別事業所数総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」2021年(令和3年)実施
農業産出額農林水産省「市区町村別農業産出額(推計)」令和5年(2023年)推計
財政力指数総務省「令和5年度 市町村別決算状況調」令和5年度決算

次回更新推奨:次回経済センサス調査(令和8年予定)公表後

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