新潟県30市町村 農業産出額ランキング【令和5年度】米だけじゃない、稼ぐ農業の実態

データ

この記事でわかること:

  • 新潟県内30市町村の農業産出額ランキングと品目構成
  • 「一人当たり農業産出額」で見る農業依存度の市町村差(最大10倍超)
  • 米依存型・畜産型・野菜型それぞれの市町村の分布
  • 「農業で稼ぐ」市町村の特徴と、農業が財政を支えているかどうか

① 要点まとめ

  • 農業産出額1位は新潟市(5,176千万円)。市域が広く、米・野菜・畜産すべてに産出がある。2位新発田市(2,245千万円)の2倍以上
  • 一人当たり農業産出額1位は津南町(約70万円)。人口8,456人に対し農業産出額592千万円(野菜と米中心)。住民1人当たりに換算すると農業が地域経済を強く支えている
  • 畜産が産出の半分超を占める市町村が5つ(村上市65%・阿賀町70%・胎内市53%・新発田市54%・津南町の野菜重視型を除く)。「新潟=米」のイメージと異なる構造が県北部に存在する
  • 湯沢町・粟島浦村は農業産出が極小。リゾート・漁業依存で農業は地域経済の主軸にない

② 農業産出額とは何か

農林水産省が毎年推計する「市区町村別農業産出額」は、各市町村で1年間に生産された農畜産物の生産者受取額の合計。単位は千万円。米・野菜・果実・畜産・その他の品目別内訳も公表されている。

「生産量」ではなく「金額」のため、単価の高い品目が多い市町村ほど産出額が大きくなる。同じ1トンでも、ブランド野菜・高級牛の産地は普通米の産地より数字が大きい。

新潟県全体の農業産出額は約2,231億円(30市町村合計)で、全国では稲作産出額が特に大きい上位県の一つ。


③ 農業産出額ランキング(全30市町村)

順位市区町村産出額(千万円)野菜果実畜産特徴
1位新潟市5,1762,7811,491367273米・野菜のバランス型。市域が広大
2位新発田市2,245867116101,212畜産54%。乳用牛・肉用牛が柱
3位村上市1,9975719481,293畜産65%。県内最大の畜産産地
4位長岡市1,6571,3061716131米79%。広大な市域で大規模稲作
5位上越市1,4871,16613026150米78%。県内最大の水田面積
6位胎内市1,0202949812536畜産53%。大規模酪農が集積
7位佐渡市8775794618446米66%。果実(柿・みかん系)も
8位阿賀野市838586274200米70%。瓢湖周辺の水田地帯
9位南魚沼市719539121936米75%。魚沼コシヒカリの中心地
10位五泉市6904081821347米59%。チューリップ・いちじくも
11位三条市679480696542米71%。製造業都市でも農業あり
12位十日町市638408129476米64%。棚田・越後妻有の農業
13位燕市62848895528米78%。製造業都市だが農地も広い
14位津南町592158239182野菜40%。高原野菜(白菜・キャベツ)が柱
15位魚沼市48025638149米53%。魚沼産コシヒカリ産地
16位柏崎市444301333102米68%。水田地帯に加え牛も
17位小千谷市29422945110米78%。錦鯉も有名産品
18位見附市2492092068米84%(県内最高水準)。専業農家が多い
19位妙高市2301645632米71%。高原野菜(妙高市)も一部
20位加茂市22712211856米54%。果実(桃)が比較的大きい
21位阿賀町2245654157畜産70%(県内最高)。肉用牛に特化
22位聖籠町2009560375米48%・野菜30%。工業用地と農地が共存
23位糸魚川市17212820319米74%。山間地が多く農地は限られる
24位関川村1681025138米61%。山間農業
25位弥彦村15490558米58%・野菜36%。観光地でも農業盛ん
26位田上町106731975米69%。
27位刈羽村5546215米84%。農地面積が小さい
28位出雲崎町4433209米75%。漁業が本業の海岸集落
29位湯沢町241840米75%。農業は副次的。リゾート依存
粟島浦村0農業なし。漁業と観光が生業

※ 単位:千万円。「—」は秘匿値または0。


④ 一人当たり農業産出額:農業依存度ランキング

産出額の絶対値では新潟市が圧倒的だが、人口で割った「一人当たり農業産出額」は農業が地域経済にどれだけ貢献しているかを示す。この指標が高い市町村ほど、農業が住民の主な収入源・地域のメインエンジンになっている。

順位市区町村一人当たり農業産出額農業の位置づけ
1位津南町700,095円高原野菜が地域経済の柱。スキー観光と並立
2位胎内市380,725円大規模酪農。住民の雇用の多くが農畜産業
3位村上市373,327円畜産(乳牛・肉用牛)中心。農業依存度が高い
4位関川村358,133円小規模山間農業。農業が主要産業のひとつ
5位阿賀町247,596円肉用牛特化。人口減少が進む中でも畜産が残る
6位新発田市244,881円酪農・肉用牛が牽引。農工複合型都市
7位阿賀野市213,967円米作中心。水田の景観が地域アイデンティティ
8位弥彦村204,407円小さな村でも農業が活発
9位佐渡市182,317円米(佐渡コシヒカリ)が島の農業の顔
10位五泉市151,018円米+野菜(チューリップ)のバランス型
24位新潟市67,971円産出額は1位だが人口が多く分母が大きい
25位長岡市64,914円広域都市。農業は産業のひとつにすぎない
29位湯沢町29,028円リゾート依存。農業の経済的比重は小さい

新潟市は産出額1位でも一人当たりでは24位。人口76万人という巨大な分母が、農業の「存在感」を希薄にする。一方、津南町は人口8,456人という小さな規模で産出額592千万円を叩き出し、一人当たり70万円という突出した数字になる。


⑤ 「畜産型」と「米型」の地域差

新潟県は「コシヒカリの産地」として米のイメージが強いが、農業産出額の品目構成を見ると、県北部(新発田市・村上市・胎内市)と山間部(阿賀町)では畜産が農業産出の半分以上を占めている

畜産型の理由:県北部は標高の低い丘陵地が多く、水田に向かない土地で大規模な酪農・肉用牛農業が発展した。新発田市は特に乳用牛の飼養頭数が多く、村上市は肉用牛の広大な放牧地を持つ。

米依存型の特徴:見附市(米84%)・刈羽村(84%)・南魚沼市(75%)・小千谷市(78%)は米の比率が極めて高い。特に南魚沼市・魚沼市は「魚沼産コシヒカリ」ブランドで高単価を実現しているが、米価の変動リスクをそのまま受ける構造でもある。

野菜型・果実型の特徴:津南町(野菜40%)・聖籠町(野菜30%)・弥彦村(野菜36%)は野菜の比率が高い。佐渡市は果実(柿・みかん系)の比率が県内で最も高い部類に入る。


⑥ 農業産出額と財政力の関係

農業産出額が多い市町村が財政的に豊かかというと、そうとは言えない。

農業産出額上位財政力指数財政力順位
新潟市(1位)0.654位
新発田市(2位)0.4812位
村上市(3位)0.3422位
胎内市(6位)0.4414位

農業の産出額が固定資産税に直結するわけではない。農地は固定資産税が優遇(農地転用規制と農地課税の軽減措置)されているため、農業産出額がいくら大きくても自治体の税収に直結しない。農業で地域は豊かになるが、それが自治体の財政力に直接跳ね返るわけではないという構造的な問題がある。

農業産出額上位の村上市・胎内市が財政力では中位にとどまっているのは、この制度的背景がある。


まとめ

指標1位最下位・特記
農業産出額(絶対額)新潟市 5,176千万円粟島浦村ゼロ
一人当たり農業産出額津南町 700,095円湯沢町 29,028円
畜産依存度阿賀町 70%見附市・刈羽村は米84%
  • 新潟県の農業は「米だけ」ではない。県北部は畜産型、山間部・高原部は野菜型の産地が形成されている
  • 農業の経済的存在感は「一人当たり産出額」で見るべき。新潟市は絶対値1位でも一人当たりでは24位
  • 農業産出額が大きくても財政力には直結しない。農地の固定資産税優遇が構造的な原因

出典・情報基準日

データ出典基準日
農業産出額(品目別)農林水産省「市区町村別農業産出額(推計)」令和5年(2023年)推計
人口総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」2025年1月1日現在
財政力指数総務省「令和5年度 市町村別決算状況調」令和5年度決算

次回更新推奨:翌年度推計公表後(例年11月頃)

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