燕市の産業構造|製造業集積型・第2次産業比率40.4%県内1位・事業所数798(県内3位)洋食器の街のデータ(R2/R4)

市町村

燕市(新潟県県央地域・人口約7.6万人・洋食器および金属加工の街)の産業タイプは製造業集積型で、第2次産業就業者比率は40.4%(県内1位・県内で唯一の40%超え)です。県平均30.3%を+10.1ポイント上回ります。

主要業種1位は製造業(14,561人・35.2%)で、就業者の3人に1人以上が製造業に従事します。製造品出荷額は約4,457億円(県内4位)、付加価値額は約1,615億円(県内4位)の規模がありながら、1人あたり付加価値額は1,013万円(県内16位)で、規模順位と効率順位の間に12ランクの乖離があります。事業所数798(県内3位)は新潟市(1,068)・長岡市(854)に次ぐ水準で、事業所あたり従業者数は約20人(新潟市約34人・長岡市約29人と比較して小規模)です。

燕三条エコシステム内の位置と、県内で唯一の第2次比率40%超えという純粋製造業特化の視点から、燕市の産業構造を読み解きます。


この記事でわかること

  • 燕市の産業タイプは「製造業集積型」。第2次産業就業者比率40.4%は県内1位で、40%超えは県内で燕市のみ
  • 主要業種1位は製造業(14,561人・35.2%)、2位卸売・小売(7,348人・17.8%)、3位医療・福祉(4,319人・10.4%)で、上位3業種で全就業者の63.4%
  • 製造品出荷額約4,457億円(県内4位)・付加価値額約1,615億円(県内4位)に対し、1人あたり付加価値額は1,013万円(県内16位)で、規模順位と効率順位に12ランクの乖離
  • 製造業事業所数798(県内3位)、事業所あたり従業者数約20人の中小事業所主体構造
  • 10年間で総就業者は△3.0%(△1,257人)減少、内訳では医療福祉が+22.6%(+797人)増加し第3次産業比率は+2.7pt上昇
  • 農業は補助的位置(産出額約65億円・県内13位、農家1戸あたり産出額561万円・県内10位)で、製造業集積型の中で単位あたり規模は県中位以上を維持
  • 隣接する三条市(第2次35.4%)とともに「燕三条」製造業集積地を形成、燕市の第2次比率は三条市より+5.0pt上位

① 燕市の産業タイプ(製造業集積型・第2次産業40.4%が県内で唯一の40%超え)

燕市の産業構造の最大の特徴は、第2次産業就業者比率40.4%が県内で唯一の40%超えである点です(章① サマリー)。

燕市の産業タイプは「製造業集積型」です。第2次産業(製造業・建設業)に就業者の40%以上が集中する市町村は、県内30市町村の中で燕市のみです。

燕市の産業構造を数値で確認します。

指標数値県内順位(30市町村中)
産業タイプ製造業集積型
第2次産業就業者比率(2020年)40.4%1位
主要業種1位製造業 14,561人全就業者の35.2%
製造業事業所数(2022年)7983位(新潟市1,068・長岡市854に次ぐ)
製造業従業者数(2022年)15,945人上位圏

※出典:総務省(国勢調査 令和2年)、経済産業省(工業統計調査 令和4年)

→ 第2次産業比率40.4%は県内1位、事業所数798は県内3位という、就業構造・事業所数の両面で県内トップクラスの製造業集積が確認できます。

第2次産業就業者比率40.4%は、県平均(単純平均)30.3%を+10.1ポイント上回ります。県内で第2次産業比率が高い上位市町村を並べると、燕市40.4%(1位)に続いて小千谷市(38.1%)・聖籠町(36.8%)・五泉市(36.2%)・胎内市(35.6%)・三条市(35.4%)などが35〜38%台に分布します。40%超えは燕市のみで、他の上位市町村とも数値で明確に離れた位置にあります。

事業所数798は県内3位(新潟市1,068・長岡市854に次ぐ)です。人口約7.6万人規模の市が、県内トップの新潟市(人口約77万人)に迫る事業所数を保有する構造は、事業所ベースで見た製造業集積の観察として際立ちます。人口1人あたりの製造業事業所数で見ると、燕市は新潟市を大きく上回る事業所密度を持つ計算になります。

主要業種の構成比でも、1位の製造業35.2%が2位の卸売業・小売業17.8%の約2倍の水準で、単一業種として就業者の3人に1人以上を占めます。県内主要製造業集積市町村(三条市・長岡市等)と比較しても、燕市は単一業種(製造業)への集中度が最も高い構造と読み取れます。

燕市の産業構造は、県内で最も第2次産業(製造業・建設業)に集中した構造です。就業者の3人に1人以上が製造業に従事し、事業所数も新潟市に次ぐ規模である点は、燕市を「洋食器・金属加工の街」として理解する数値的な裏づけになります。産業タイプ「製造業集積型」の詳細な内訳は章②〜⑤で確認できます。


② 産業構造サマリー(2020年・第2次40.4%と第3次54.4%の構成)

燕市の産業別就業者比率と県内順位を整理します。

指標数値県内順位(30市町村中)
総就業者数41,335人6位
第1次産業就業者比率3.6%25位
第2次産業就業者比率40.4%1位
第3次産業就業者比率54.4%25位

※出典:総務省(国勢調査 令和2年)

→ 第2次産業比率40.4%は県内1位で、県平均30.3%を10ポイント以上上回ります。

総就業者数41,335人は県内6位の規模で、下越圏13市町村の中では新潟市(38万人台)に次ぐ水準です。第1次産業比率3.6%は県平均8.6%を下回り、県内25位(下位圏)に位置します。第3次産業比率54.4%は県平均59.9%を下回り、こちらも県内25位です。

第2次産業への集中度が高い一方で、第1次・第3次産業の比率はいずれも県平均を下回る構成です。第2次産業比率が第1次・第3次を「引き上げる」ように大きく突出しているのが燕市の構造で、この構造は県内他市町村では見られません。

▼【グラフ:tsubame_産業構造.png 新潟県30市町村の産業別就業者比率(2020年・燕市を強調)】


③ 10年間の産業構造変化(総就業者△3.0%だが医療福祉+22.6%が第3次比率+2.7pt上昇の主因)

10年で総就業者は△3.0%減少しましたが、内訳では医療福祉が+22.6%増加し、第3次産業比率が+2.7pt上昇しました(章③ サマリー)。

2010年から2020年までの10年間で、燕市の総就業者数は△3.0%(△1,257人)減少しました。しかし内訳では医療福祉が+22.6%(+797人)増加し、この変化が第3次産業比率+2.7pt上昇の内訳変化の中心となっています。

2010年から2020年までの就業者数と産業構造の推移を整理します。

総就業者数第1次比率第2次比率第3次比率
2010年(H22)42,592人3.8%41.0%51.7%
2015年(H27)43,047人4.0%41.0%53.5%
2020年(R2)41,335人3.6%40.4%54.4%
10年変化△1,257人(△3.0%)△0.2pt△0.6pt+2.7pt

※出典:総務省(国勢調査 令和2年・平成27年・平成22年)

→ 2015年ピーク後、総就業者は△3.0%減少しましたが、内訳では医療福祉が+22.6%増加しています。

10年間の内訳を業種別に見ると、対照的な動きが観察できます。

業種2010年2015年2020年10年変化
製造業15,167人15,415人14,561人△606人(△4.0%
医療・福祉3,522人4,146人4,319人+797人(+22.6%)

製造業就業者は10年で△606人減少しましたが、医療・福祉就業者はそれを上回る+797人の増加を示しました。医療・福祉の+22.6%増加は、業種別の10年変化率として顕著な水準です。

総就業者は2015年の43,047人をピークに減少に転じており、10年で△1,257人(△3.0%)減少しています。第2次産業比率は41.0%→40.4%へ△0.6pt低下、第3次産業比率は51.7%→54.4%へ+2.7pt上昇しました。

燕市は「製造業集積型」でありながら、10年間で製造業就業者が△4.0%減少し、代わって医療・福祉業種が+22.6%増加した内部シフトを経ています。第3次産業比率の+2.7pt上昇は、この医療福祉の伸びとみられます(分母である総就業者数減少の影響も含まれるため、単純な因果ではありません)。産業構造は依然として「製造業集積型」を維持しつつも、緩やかにサービス業(医療福祉中心)の比重が高まっている構造と読み取れます。

▼【グラフ:tsubame_産業変化.png 燕市の産業構造推移(2010→2015→2020年・積み上げ棒)】


④ 主要業種の詳細(就業者数上位5業種・製造業35.2%が突出)

就業者数の多い上位5業種を確認します。

順位業種名就業者数就業者比率
1位製造業14,561人35.2%
2位卸売業・小売業7,348人17.8%
3位医療・福祉4,319人10.4%
4位建設業2,144人5.2%
5位その他サービス業1,778人4.3%

※出典:総務省(国勢調査 令和2年)

→ 製造業35.2%が突出し、上位3業種で全就業者の約3分の2(63.4%)を占めます。

主要業種1位「製造業」の就業者比率35.2%は、単一業種として就業者の3人に1人以上を占める水準です。2位の卸売業・小売業(17.8%)と比べると、製造業は約2倍の集中度を持ちます。1位から3位までを合わせた上位3業種で、全就業者の63.4%を占める構造です。

主要業種2位「卸売業・小売業」(7,348人・17.8%)は、県内主要製造業集積市町村と比較しても一定の水準です。洋食器・金属ハウスウェアという最終消費財の産地特性から、産地問屋・商社・小売業が就業構造の中に一定比率を占める数値関係が観察されます。

主要業種3位「医療・福祉」(4,319人・10.4%)は、章③で確認したとおり10年で+22.6%成長した業種です。10年前の2010年時点では3,522人でしたが、2020年時点では4,319人に達し、業種間の順位でも3位を維持しつつ規模を拡大しました。

▼【グラフ:tsubame_就業者数.png 燕市の業種別就業者数(2020年・上位10業種)】


⑤ 製造業の規模と質(規模4位×効率16位の12ランク乖離・付加価値率36.2%)と農業の補助的位置

燕市の製造業は出荷額・付加価値額が県内4位の大規模ですが、1人あたり付加価値額は16位で規模順位より12ランク低い水準です。農業は第1次比率3.6%(県内25位)の中で産出額13位・農家1戸あたり10位と、補助的位置ながら単位規模は県中位以上です(章⑤ サマリー)。

燕市の製造業は製造品出荷額4,457億円(県内4位)・付加価値額1,615億円(県内4位)の規模がありながら、1人あたり付加価値額1,013万円(県内16位)で、規模順位と効率順位に12ランクの乖離があります。産業タイプ「製造業集積型」の主軸である製造業の規模と質、および補助的位置にある農業を本章にまとめて整理します。

製造業の規模と効率

2022年の製造業指標を規模と効率の両面で整理します。

指標数値県内順位
製造品出荷額(2022年)約4,457億円4位
付加価値額(2022年)約1,615億円4位
付加価値率36.2%
製造業事業所数7983位
製造業従業者数15,945人上位圏
1人あたり出荷額約2,795万円/人
1人あたり付加価値額1,013万円/人16位

※出典:経済産業省(工業統計調査 令和4年)※従業者4人以上の事業所が対象

→ 出荷額・付加価値額は県内4位ですが、1人あたり付加価値額は16位で規模順位より12ランク低い水準です。

製造品出荷額4,457億円は、新潟市(11,851億円)・長岡市(6,571億円)・上越市(5,901億円)に次ぐ県内4位の規模です。付加価値額1,615億円も県内4位で、燕市の製造業が新潟県の主要製造業集積のひとつであることを示します。

一方、1人あたり付加価値額1,013万円は県内16位で、県平均(加重平均)1,188万円/人を△175万円下回ります。規模順位4位と効率順位16位の間には12ランクの乖離があり、県内でも顕著な乖離パターンです。

参考までに、1人あたり付加価値額が高い他市町村を並べると次のようになります。

市町村1人あたり付加価値額順位付加価値率
刈羽村774万円23位52.7%
新発田市1,101万円13位45.1%
聖籠町1,493万円6位40.9%
燕市1,013万円16位36.2%

付加価値率40%超えの事例として聖籠町(40.9%)・新発田市(45.1%)・上越市(48.8%)・刈羽村(52.7%)などを挙げると、いずれも発電・石油化学等の装置産業を含む市町村です。これらと比較すると、燕市の付加価値率36.2%は加工組立業種の特徴に沿った水準となります。洋食器・ステンレス製品の製造では、原材料(ステンレス鋼材等)の仕入れコスト・研磨・表面処理の外注費が売上に占める割合が大きくなる構造とみられます。

事業所規模の観察(中小事業所主体構造)

事業所数798(県内3位)を製造業従業者数15,945人で割ると、事業所あたり従業者数は約20人です。他市町村と比較すると次のようになります。

市町村製造業事業所数製造業従業者数事業所あたり従業者数
新潟市1,068約35,970人約34人
長岡市854約25,045人約29人
燕市79815,945人約20人

燕市は「小規模・多数」の中小事業所主体構造で、新潟市・長岡市と比べると1事業所あたりの従業者規模が小さい構成です。多数の中小製造事業所が市内に集積する構造は、燕市の製造業の特徴として読み取れます。

燕市の製造業は、出荷額・付加価値額の絶対規模では県内4位の大規模ですが、1人あたりの付加価値効率では16位で県平均を下回ります。この「規模と効率の12ランク乖離」は、多数の中小事業所が加工組立工程を分業する産業構造と数値上整合します。1人あたり付加価値額は製造業事業所ベース(従業者4人以上)の労働生産性指標であり、個別事業所の給与や賃金水準そのものではない点に注意が必要です。

▼【グラフ:tsubame_県内ランキング.png 新潟県内 製造品出荷額ランキング(燕市を強調)】

農業の補助的位置(産出額13位・農家1戸あたり10位)

燕市は産業タイプ「製造業集積型」で第1次産業就業者比率3.6%(県内25位)と低位ですが、農業産出額約65億円(県内13位)・農家1戸あたり産出額561万円(県内10位)と、製造業集積の中でも農業が一定規模を維持しています。以下は補助的位置にある農業指標の整理です。

指標数値県内順位
農業産出額(2022年推計)約65億円13位
農業経営体数(2020年)1,159戸
経営耕地面積(2020年)約5,073ha
農家1戸あたり産出額561万円/戸10位
農地1haあたり産出額約128万円/ha

※出典:農林水産省(市町村別農業産出額(推計)令和4年・農林業センサス 令和2年)

→ 農業産出額は県内13位ですが、農家1戸あたり産出額561万円は県内10位で、産出額順位より3ランク上位です。

燕市の農業産出額約65億円は県内13位で、規模としては県平均前後の水準です。一方、農家1戸あたり産出額561万円/戸は県内10位で、産出額の順位(13位)よりも3ランク上位に位置します。農業経営体1,159戸に対して65億円の産出があることから、1戸あたりの規模が県内でも上位に位置する構造です。

燕市の主な農産品は、水稲(コシヒカリ等)・きゅうり・トマトです(燕市公式情報より)。きゅうりは県内でも上位の生産量を持ち、地域ブランド「もとまちきゅうり」として知られます。越後平野の一角に位置する地理的条件を活かした水稲栽培が農業の基盤を成し、水稲に野菜類(きゅうり・トマト等)の産出が加わる複合構造となっています。

農業経営体1,159戸に対して経営耕地面積約5,073haという規模は、経営体1戸あたりでは約4.4ha相当となります。農地1haあたり産出額約128万円/haという水準は、水稲を中心とした稲作平野部の農業構造と数値上整合します。製造業への集中度が高い市町村でも農業が一定規模を維持している複合的な構造として、燕市の農業は補助的位置ながら記録に残る水準です。


⑥ 地域圏内での位置づけ(燕三条製造業集積地・燕市の第2次比率は三条市より+5.0pt上位)

燕三条製造業集積地内で三条市(第2次35.4%・出荷額5位)と燕市(第2次40.4%・出荷額4位)は同じ「製造業集積型」ですが、燕市の方が製造業依存度が高い構造です(章⑥ サマリー)。

燕市は、隣接する三条市とともに全国的に知られる「燕三条」金属加工業集積地を構成します。本章では、燕市の視点から燕三条圏内での産業構造を比較します。

燕三条エコシステム内での燕市と三条市の産業指標比較

燕三条エコシステム内での燕市と三条市の産業指標を比較します。

指標燕市三条市
産業タイプ製造業集積型製造業集積型
総就業者数41,335人上位圏
第2次産業就業者比率40.4%(県内1位)35.4%(県内上位)
主要業種1位(製造業)比率35.2%28.8%
製造品出荷額約4,457億円(県内4位)約2,963億円(県内5位)
製造業事業所数798(県内3位)590
事業所あたり従業者数約20人約22.4人

※出典:総務省(国勢調査 令和2年)・経済産業省(工業統計調査 令和4年)

→ 両市とも「製造業集積型」ですが、燕市の第2次産業比率は三条市より+5.0ポイント高い水準です。

燕市と三条市の産業構造の違い

対比表から、燕市と三条市の産業構造の違いは次の3点に整理できます。

  1. 第2次産業就業者比率:燕市40.4%(県内1位)> 三条市35.4%(県内上位)で、燕市が+5.0pt高い水準
  2. 主要業種1位(製造業)比率:燕市35.2% > 三条市28.8%で、燕市が+6.4pt高い単一業種集中度
  3. 製造業事業所数:燕市798(県内3位)> 三条市590で、燕市が+208事業所多い集積規模

産品カテゴリの分業構造

燕三条エコシステムは、金属加工技術をベースにしながら、異なる産品カテゴリを担う2市による集積地として知られます。

  • 燕市:洋食器・金属ハウスウェア(スプーン/フォーク/ナイフ・キッチンツール・保温ボトル・食器類等の食卓/家庭用の最終消費財・プレス/研磨系技術)
  • 三条市:打刃物・作業工具・金物(工具/道具・鍛造/切削系技術)

いずれも金属加工業ですが、燕市は「食卓に届く最終消費財」、三条市は「使う人が仕事に使う道具」という異なる市場カテゴリを担う構造と読み取れます。両市とも主要業種2位に卸売業・小売業が入り(燕市17.8%・三条市19.0%)、製造業+卸売の組み合わせが上位に並ぶ点は共通します。

「燕三条」を単一の製造業集積地として捉えた場合

燕市と三条市の製造業指標を合算すると、次の規模になります。

  • 製造業事業所数の合算:798+590 = 約1,388事業所
  • 製造業従業者数の合算:15,945人+13,241人 = 約29,186人
  • 製造品出荷額の合算:約4,457億円+約2,963億円 = 約7,420億円

「燕三条」を単一の製造業集積地として合算すると、事業所数・従業者数・出荷額のいずれも、新潟市を除く県内の他市町村を大きく上回る規模となります。県内の主要製造業集積地として、県央地域(燕三条圏)が保有する製造業の集積規模がここに現れます。

数値の意味(データから読み取れる範囲):

燕市は「燕三条」製造業集積地の一角を占めながら、単独でも県内で第2次産業比率1位・事業所数3位の産業構造を保有しています。三条市(打刃物・工具)と異なる産品カテゴリ(洋食器・金属ハウスウェア)を担い、両市とも「製造業集積型」でありながら、燕市の方が第2次産業比率・単一業種集中度・事業所数のいずれでも上位に位置します。燕市を単独で理解するだけでなく、三条市と対にした「燕三条」の産業構造として捉える視点が、県央地域の製造業集積を理解するうえで妥当となります。


⑦ 移住検討者・起業出店・就職転職への読み方

本章は「燕市 移住」「燕市 就職 製造業」「燕市 起業」等の検索意図に対する、産業構造データから読み取れる判断材料の整理です。個別の意思決定を代替するものではありません。

視点1:就職・転職検討者向け(製造業志望)

燕市は製造業就業者14,561人(35.2%)・製造業事業所数798(県内3位)で、製造業関連の就業機会が県内でも上位の集中度を持つ市です。

読み取り材料データ根拠
製造業労働市場の規模製造業就業者14,561人(就業者の35.2%)・製造業事業所798(県内3位)
中小事業所主体の求人構造事業所あたり従業者数約20人(新潟市約34人・長岡市約29人と比較して小規模)
洋食器・金属加工の産地主要業種1位=製造業35.2%(県内1位相当)・第2次産業比率40.4%(県内1位)
製造業の労働生産性の目安1人あたり付加価値額1,013万円(県内16位)・付加価値率36.2%

1人あたり付加価値額1,013万円は製造業事業所ベース(従業者4人以上)の労働生産性指標で、個別事業所の給与そのものではありません。中小事業所主体の求人構造では、事業所ごとの規模・技術分野・給与体系が大きく異なる点に留意が必要です。

視点2:起業・出店検討者向け

燕市の産業構造は製造業35.2%を主軸としつつ、卸売業・小売業17.8%(7,348人)と医療・福祉10.4%(4,319人)が第2・第3位を占め、製造業以外の需要基盤も一定規模を持ちます。

読み取り材料データ根拠
製造業BtoB市場の規模製造品出荷額約4,457億円(県内4位)・付加価値額約1,615億円(県内4位)
中小事業所への関連サービス需要事業所数798・事業所あたり従業者20人(金型・研磨・表面処理・物流等の分業構造)
商業サービスの需要基盤卸売業・小売業7,348人(就業者の17.8%)・上位10市町村比較で高めの水準
医療福祉関連の需要拡大医療・福祉就業者4,319人・10年で+22.6%成長(介護・福祉サービス関連の需要変化の目安)

「燕三条」製造業集積地の一角として、洋食器・金属加工業の産地問屋・商社・関連サービス(金型・研磨・表面処理・物流等)の需要基盤が確認できます。

視点3:移住検討者向け

燕市は製造業集積型の市ですが、生活サービスに関わる業種(医療福祉4,319人・卸小売7,348人)が第2・第3位を占め、農業も一定規模(65億円・県内13位)を保有する複合的な産業構造を持ちます。

読み取り材料データ根拠
生活サービスの水準医療・福祉就業者4,319人(就業者の10.4%)・卸売業・小売業7,348人(17.8%)
就業先の選択肢の広さ製造業14,561人(35.2%)+ 卸小売7,348人(17.8%)+ 医療福祉4,319人(10.4%)= 上位3業種で63.4%
農業・兼業農業の選択肢農業経営体1,159戸・農家1戸あたり産出額561万円(県内10位)・水稲+野菜(きゅうり・トマト)の複合構造
地理的位置(県央地域)燕三条エコシステム内・新潟市と長岡市の中間圏

個別の医療施設・商業施設・住環境・住宅コスト・保育・学校情報は本記事の範囲外です。移住の意思決定にあたっては、これらの別データを別途参照してください。

⚠️ 上記は「データから読み取れる範囲での判断材料」であり、移住・就業・起業の意思決定を代替するものではありません。


⑧ データの見方・注意点

産業タイプ分類は目安です

本記事の「産業タイプ」(製造業集積型・高付加価値製造業型・農業型・複合型・都市サービス型等)は、産業別就業者比率と製造業指標を組み合わせた分類です。同一タイプでも市町村ごとに主要業種・規模・変化パターンは異なるため、タイプラベルだけで判断せず、本文の各指標を合わせて確認してください。

就業者比率と生産性は別指標です

第1/2/3次産業の就業者比率は「誰がどこで働いているか」を示す指標です。1人あたり付加価値額(製造業事業所ベース)は「製造業の労働生産性の目安」を示す別の指標であり、就業者比率が高いほど生産性が高いとは限りません。

製造業指標は事業所ベースです

⑤で提示する製造品出荷額・付加価値額・1人あたり付加価値額は、経済産業省「工業統計調査」の事業所ベース集計です。市町村内に本社を置く企業ではなく、事業所(工場・作業所等)が市町村内にあることが集計基準となります。県外本社の事業所も含まれる場合があります。

農業産出額は推計値です

⑤で提示する農業産出額は農林水産省「市町村別農業産出額(推計)」による推計値です。市町村単位の農業産出額は農林水産省が農業経営体調査・作物統計等から推計しており、実額とは差が生じる場合があります。

農業産出額と農家収入は別です

農業産出額は市町村内で生産された農産物の推定額(生産額ベース)で、農家の手取り収入とは異なります。生産コスト・流通経費・農業経営体の規模差により、産出額と農家収入の関係は市町村ごとに異なります。

主要業種比率の分母は総就業者数です

②〜④で提示する主要業種の比率は、国勢調査「産業(大分類)別就業者数」を分母として計算しています。分母は当該市町村に居住する15歳以上就業者(従業地ではなく居住地ベース)です。市町村外へ通勤する就業者も含まれます。

10年変化は国勢調査5年ごとの比較です

③で提示する2010年→2015年→2020年の10年変化は、国勢調査(5年ごと実施)の3時点比較です。年次データではないため、単年度のショック(特定事業所の開設・閉鎖等)の影響が5年間の中で吸収されている場合があります。

産業タイプは順位ではありません

産業タイプの分類(製造業集積型等)は市町村の産業構造の特徴を示す分類であり、優劣を示すものではありません。「複合型」が「農業型」より優れているという意味ではなく、産業の集中度や分散度の違いを示す指標です。


まとめ

燕市の産業構造の特徴(データから読み取れる範囲)

  • 産業タイプは製造業集積型。第2次産業就業者比率40.4%は県内1位で、県内で唯一の40%超え(県平均30.3%を+10.1pt上回る)
  • 主要業種1位「製造業」(14,561人・35.2%)が突出し、上位3業種(製造業・卸小売・医療福祉)で全就業者の63.4%を占める
  • 製造品出荷額約4,457億円(県内4位)・付加価値額約1,615億円(県内4位)の規模ながら、1人あたり付加価値額1,013万円(県内16位)で規模順位と効率順位に12ランクの乖離
  • 製造業事業所数798(県内3位)・事業所あたり従業者数約20人の中小事業所主体構造
  • 農業は補助的位置ながら、産出額約65億円(県内13位)・農家1戸あたり産出額561万円(県内10位)で単位あたり規模は県中位以上を維持
  • 隣接する三条市(第2次35.4%・出荷額5位)とともに「燕三条」製造業集積地を構成、燕市の第2次比率・製造業比率・事業所数はいずれも三条市より上位

10年間の産業構造変化

2010年から2020年にかけて総就業者は△3.0%(△1,257人)減少し、2015年ピーク後に減少に転じました。内訳では製造業△4.0%(△606人)減少しながら医療・福祉+22.6%(+797人)増加し、第2次産業比率は△0.6pt低下、第3次産業比率は+2.7pt上昇しました。「製造業集積型」の構造を維持しつつ、緩やかに医療福祉を中心とした第3次産業に比重が移りました。

派生指標で見える意外な観察

  • 第2次産業比率40.4%は県内で唯一の40%超え:加茂市・見附市・魚沼市・三条市などの35〜37%台とも数値で明確に離れており、燕市のみが到達する水準
  • 規模順位4位×効率順位16位の12ランク乖離:付加価値率36.2%は加工組立業種の構造と整合し、刈羽村(52.7%)・聖籠町(40.9%)等の高付加価値率業種を持つ市町村と対照的
  • 事業所数798(県内3位)×事業所あたり従業者20人:新潟市(約34人)・長岡市(約29人)と比較して小規模で、多数の中小事業所が集積する構造
  • 医療福祉+22.6%(+797人)が製造業△606人減を上回る:総就業者△1,257人減の内訳では、医療福祉の伸びが製造業の減少を業種単位では上回る構造
  • 農業産出額13位×農家1戸あたり産出額10位:産出額順位より単位あたり順位が3ランク上位で、製造業集積型の中でも農業が補助的位置ながら単位規模を維持する複合構造

この記事の執筆・データについて

執筆: 新潟データ(新潟県在住の個人運営)
データ基準日: 令和2年(2020年)国勢調査/令和4年(2022年)工業統計調査・市町村別農業産出額(推計)/令和2年(2020年)農林業センサス/令和3年(2021年)経済センサス-活動調査
更新日: 2026-09-05
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本記事は公的統計を整理・解釈したデータ記事です。専門的な投資助言・移住助言・事業判断助言ではありません。移住・就業・起業・出店等の重要な意思決定にあたっては、原典データおよび該当分野の専門家にご確認ください。


出典

  • 産業別就業者数(第1〜3次産業・主要業種):
    総務省(国勢調査 令和2年・平成27年・平成22年)
  • 製造品出荷額・製造業従業者数・付加価値額:
    経済産業省(工業統計調査 令和4年)
  • 農業産出額:
    農林水産省(市町村別農業産出額(推計)令和4年)
  • 農家数・農地面積:
    農林水産省(農林業センサス 令和2年)
  • 事業所数・従業者数:
    総務省・経済産業省(経済センサス-活動調査 令和3年)

派生値の算出方法:

本記事で使用する「県平均・県合計・倍率」等の派生値は、新潟県30市町村の集計値から算出しました。

  • 県平均:30市町村の該当指標の単純平均
  • 県合計:30市町村の該当指標の合計値
  • 県内順位:30市町村を該当指標の降順(または昇順)でソートした順位
  • 1人あたり付加価値額:付加価値額 ÷ 製造業従業者数(工業統計調査の事業所ベース)
  • 主要業種比率:業種別就業者数 ÷ 総就業者数(国勢調査)

データ基準日:令和2年(2020年)国勢調査・令和4年(2022年)工業統計調査・市町村別農業産出額
次回更新推奨:令和7年(2025年)国勢調査データ公表後、令和6年(2024年)工業統計調査データ公表後

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