長岡市の上水道は住み続けて大丈夫?──11 町村合併市・24 万人規模の広域インフラ・2032 年赤字化見込み(R5 年)

上水道

長岡市(給水人口 239,932 人・県内 2 位規模)の上水道は、配水管 2,096.23 km・送水管 39.60 km・導水管 6.96 km・浄水場のすべてを長岡市(市営・単独) が管理しており、上流の用水供給企業団への依存はなく全量自己水源で完結しています。給水人口は新潟市に次ぐ県内 2 位・水道管総距離 2,142.79 km も上位クラスで、平成 17-22 年(2005-2010 年)の 11 町村合併(中之島・越路・三島・山古志・小国・和島・寺泊・栃尾・与板・川口 等)を経た広域インフラを、中越の中核都市として運営しています。

政府データ上は寿命超え管の割合 1.04%(県内 27 事業体中 下位から 5 番目・良好水準)・年間更新率 0.28% と、表面上は「県内でも新しい部類」に見えます。ただしこの数字は、2021 年の全地域料金統一(旧簡易水道 → 長岡地域料金)と、政府ダッシュボードの事業種別コードの変動(2014-2022 = 上水道 → 2023 = 簡易水道のみ)が同時に反映された結果で、他 24 事業者と単純比較はできません。10 年推移では 2022 年に寿命超え率 226.4%(100% を超えるあり得ない値・入力ミス)等の明らかな異常値も検出されています。

財務面は、経常収益 53.46 億円(うち給水収益 1.25 億円 + 営業外収益 5.52 億円)に対し経常費用 4.88 億円で、見た目は経常黒字 48.59 億円・経常収支比率 1096.15%(県内で最も高い数字)です。ただし給水収益は 2020 年 46.90 億円 → 2021 年 1.29 億円と 1 年で -97% 急落した「分母効果」を含んでおり(2023 年 1.25 億円)、料金回収率 2.75%・企業債残高 147.90 億円(絶対額県内 4 位規模・給水収益比 118.76 倍)も同じ分母効果の影響を受けます。

長岡市本体の一般会計財政は 「財政余裕(水道への繰入余地あり)」 判定(財政力指数 0.59・実質公債費比率 7.3%・標準財政規模 715.76 億円)で、上水道への繰出金は R5 実績 1.20 億円 + 簡易水道への繰出金 3.27 億円 = 水道系合計 4.47 億円を投入しています。妙高市(水道系 2.31 億円)の約 1.9 倍・関川村(同 0.58 億円)の約 7.7 倍の規模で、大都市型の財政余力を保っています。

ただし長岡市水道事業経営戦略(R3-R12・令和 3 年 3 月策定)の R6 改定案では、2032 年度に単年度赤字化する見込み が提示されており(新潟日報 2026 年報道)、業務委託拡大・広域化の検討が進んでいます。住民として重要なのは「寿命超え 1.04% で安心」と即断せず、11 町村合併時の管路混在・2004 年中越地震での断水経験・2032 年赤字化見込みへの向き合い方(業務委託拡大・広域化)を確認する段階です。

この記事では、政府統計ダッシュボード「水道事業ダッシュボード」(内閣府)等をもとに、長岡市の上水道の状態・数字が乱れる理由・11 町村合併と 2021 年料金統一の背景・2032 年赤字化見込みへの向き合い方を整理します。


  1. この記事でわかること
  2. 新潟県全体の中で、長岡市はどこにいる?
  3. 1. 中越 24 万人都市の上水道が老朽化したらどうなるか──11 町村合併市の広域インフラ
    1. 「寿命超え」の意味・「上水道と下水道の違い」
  4. 2. 長岡市の上水道管の現状
  5. 3. 今のペースだと、全部新しくなるまで何年
    1. なぜ 40 年周期で更新できないと寿命超えが積み上がるのか
  6. 4. 老朽化のペースに、更新は追いついているか
  7. 5. このまま続いたら、10 年後・20 年後はどうなる
  8. 6. なぜこうなっている──収支・借入・費用の構造
    1. 6-1. 収支の状況:見た目は経常収支比率 1096.15% の圧倒的黒字だが、分母縮小効果を含む
    2. 6-2. なぜ表面上の黒字なのに剰余金が減り借金も残っているか
    3. 6-3. 費用の推移
    4. 6-4. 判定:11 町村合併市 × 2021 年料金統一 × 2032 年赤字化見込みが生む「大都市型の分母縮小事例」
  9. 7.5. 長岡市の上水道はどう運営されているか(背景情報)
    1. 7.5.1. 管理団体マップ:配水管・送水管・導水管・浄水場すべて長岡市(市営・単独)・全量自己水源
    2. 7.5.2. お金の流れ:料金 1.25 億 + 営業外収益 5.52 億 + 企業債残高 147.90 億
    3. 7.5.3. 自治体一般会計財政:財政力指数 0.59・「財政余裕(水道への繰入余地あり)」判定
    4. 7.5.4. 11 町村合併履歴と 2021 年料金統一
    5. 7.5.5. 政府データを読むときの注意点──統合影響・事業種別コード不安定・単純比較困難
  10. 7. 今後、良くなる見込みはあるか
    1. 7-1. 収入源:給水人口は緩やかに減少・2032 年赤字化見込み
    2. 7-2. 上水道インフラの資産価値
    3. 7-3. 本気を出したら何年で更新できるか
    4. 7-4. 何年で全部更新できるか──5 つのシナリオ + 自治体一般会計の繰入余地
  11. 8. 住民として確認できること
    1. 8-1. 長岡市水道局への問合せと経営戦略の実運営状況
    2. 8-2. 業務委託拡大・広域化議論の進捗
    3. 8-3. 11 町村合併時の管路混在の解消順位
  12. 9. データ・注意事項・免責

この記事でわかること

項目値
事業者コード152021(長岡市・市営・単独)
給水人口(R5)239,932 人 ── 県内 25 上水道事業者中 2 位(新潟市の次)
上水道の管理者配水管・送水管・導水管・浄水場すべて長岡市(市営・単独)
上流依存なし(全量自己水源)
上水道管総距離(R5)2,142.79 km(配水 2,096.23 + 送水 39.60 + 導水 6.96)── 県内 3 位(上越市 2,153.03 km に次ぐ・僅差 10.24 km で上越市とほぼ同水準)
寿命超え管の割合(R5・政府データ)1.04% ── 県内 27 事業体中 下位から 5 番目(統合影響で低く見える可能性)
年間更新率(R5)0.28% ── 100% 更新まで単純計算で 約 363 年(統合影響を含む数字)
給水収益(R5)1.25 億円(2019 年 46.86 億円から -97% 縮小・分母効果)
営業外収益(R5)5.52 億円(他会計繰入・補助金等)
経常費用(R5)4.88 億円(分母縮小の影響を含む)
経常黒字(R5)+48.59 億円(表面上は県内最高水準・分母縮小効果を含む)
経常収支比率(R5)1096.15%(県内 27 事業体で最高・分母縮小効果を含む)
剰余金(R5)1.49 億円(2015 年 71.50 億円から -70 億円縮小)
企業債残高(R5)147.90 億円(絶対額県内 4 位規模・新潟市 501.11 億円・三条地域用水 160.34 億円・柏崎市 152.38 億円に次ぐ・給水収益比 118.76 倍)
事業体運営見た目は原価割れ + 補助金・繰入依存 + 借入依存の 3 重・ただし分母縮小影響を含む
一般会計財政余力財政余裕(水道への繰入余地あり)(財政力指数 0.59・実質公債費比率 7.3%・標準財政規模 715.76 億円)
R5 一般会計から水道系繰出金上水道 1.20 億円 + 簡易水道 3.27 億円 = 水道系合計 4.47 億円(別途 下水道 39.17 億円)
40 年周期に必要な年投資額127.4〜212.4 億円/年(現状 9 年平均 18.45 億円・充足率 8.7〜14.5%)
データ信頼性低(急変検出 16 件で県内 4 位・2023 年 事業種別コードが「簡易水道事業のみ」の疑い)
経営戦略の見通し2032 年度に単年度赤字化する見込み(長岡市水道事業経営戦略 R6 改定案・新潟日報 2026 年報道)
判定統合過渡期(大規模市の広域水道インフラ・政府データ信頼性 低)

新潟県全体の中で、長岡市はどこにいる?

まず、新潟県の 25 上水道事業者の中で長岡市がどこに位置するかを見ます。

【グラフ:G0A_新潟県マップ.png】

上のマップは、新潟県の各市町村エリアごとの「寿命超え管の割合」を色分けしたものです。色が濃いほど老朽化が進んでいます。長岡市は中越地方の中核都市で、面積は新潟市に次ぐ広域を持ちます。政府データ上の寿命超え率 1.04% はごく薄い色で塗られていますが、この数字は後述する「統合過程と集計単位変動」の影響を含みます。

【グラフ:G0B_25事業者散布図.png】

上の散布図は、新潟県 25 上水道事業者の「老朽度(横軸)」と「更新率(縦軸)」を並べたものです。4 つの領域に分けています。

  • 順調(左上):老朽少 + 更新速 → 妙高市 1 事業者のみ
  • 対応中(右上):老朽多 + 更新速 → 該当なし(0 事業者)
  • 様子見(左下):老朽少 + 更新遅 → 長岡市・湯沢町・胎内市 など
  • 要注意(右下):老朽多 + 更新遅 → 聖籠町・五泉市・加茂市・関川村・佐渡市 など

長岡市は散布図上で「様子見(左下)」領域に位置します。ただしこれは、2020-2023 年の統合過程で分母(総管路距離・給水収益)が集計単位切り替えの影響を受けた結果として現れた見かけの位置で、他事業者と横並びで「様子見でよい」と評価できる状態ではありません。詳細は章 2・章 6・章 7.5 で扱います。

1. 中越 24 万人都市の上水道が老朽化したらどうなるか──11 町村合併市の広域インフラ

この記事は長岡市の「上水道」のみを扱います。下水道(公共下水道・農業集落排水)は別記事で扱います。

長岡市は、給水人口 239,932 人(県内 2 位・新潟市の次)を抱える中越地方の中核都市です。平成 17〜22 年(2005-2010 年)の合併により、旧長岡市に中之島・越路・三島・山古志・小国・和島・寺泊・栃尾・与板・川口ほか 11 町村を編入した結果、市街地から中山間集落までを含む広域を 総管路 2,142.79 km(県内 3 位・上越市 2,153.03 km とほぼ同水準)でカバーしています。市街地の高密度な住宅・事業所と、山古志・小国・栃尾・寺泊等の中山間集落の点在給水を、同一の市営水道が同時に担う構造です。

ここで大規模断水や配水管破裂が発生した場合、住民生活への影響に加え、他の中規模市とは異なる 4 つの困難が同時に降りかかる余地があります。

1. 2004 年中越地震での市内広域断水経験:平成 16 年(2004 年)10 月 23 日の新潟県中越地震では、当時の山古志村(現・長岡市山古志地区)の全域断水・市街地でも広範囲の断水が発生した経験があります。合併後の長岡市の上水道は、この経験を前提に、地震・豪雪期の断裂リスクへの備えが問われる立場にあります。

2. 11 町村合併に伴う管路混在:平成 17-22 年の合併で編入した旧町村ごとに、敷設時期・材質・耐震規格の異なる管路が併存しています。全域を横並びで「どこから更新するか」を判定するには、旧町村ごとの管路台帳の統合と更新順位の見極めに時間と手間を要します。

3. 大規模事業者ながら政府データ上の職員数が 6 人:政府ダッシュボード上の R5 年度 長岡市水道事業の職員数は 6 人です。給水人口 24 万人規模でこの水準は、実務の大半が業務委託・他課からの兼務・会計年度任用職員でカバーされている構造です。10 年推移では 2015-2019 年に 111〜113 人 → 2020 年 127 人 → 2021 年以降 6 人と乱高下しており、政府データの集計基準変更を含む可能性がありますが、いずれにせよ大規模都市の水道インフラを少人数の統括専任職員で運営している状態です。

4. 2032 年度に単年度赤字化する見込み:長岡市水道事業経営戦略の R6 改定案では、2032 年度(令和 14 年度)に単年度赤字化する見込み が提示されています(新潟日報 2026 年報道)。給水人口の年 -1,700 人減少・企業債残高 147.90 億円の償還負担・大規模施設更新原資の不足の複合により、更新原資の逓減局面に入っている状態です。

これらは中越の中核都市の上水道が本質的に抱える構造的課題で、政府データ表面上の「寿命超え 1.04%」だけでは把握できない部分です。

「寿命超え」の意味・「上水道と下水道の違い」

上水道と下水道の違い:本記事の対象は上水道(浄水場で処理した安全な水を配水管を通じて家庭・事業所に届ける事業)です。汚水を集めて処理する下水道(公共下水道・農業集落排水)は別事業・別会計で、この記事では扱いません。長岡市の場合、決算カード上は下水道への繰出金 39.17 億円が別枠で計上されており、上水道の繰出金 1.20 億円・簡易水道の繰出金 3.27 億円と合わせて水道系全体像が見える構造です(章 7.5.3 で詳述)。

「寿命超え」の意味:上水道管の法定耐用年数は 40 年(地方公営企業法施行規則)です。40 年経過 = 直ちに壊れるという意味ではなく、材質によって実際の耐久年数は異なります(ダクタイル鋳鉄管は 60〜100 年もつ場合もあり、逆に古い塩化ビニル管は 40 年より早く劣化する場合もあります)。会計上「そろそろ点検・更新を検討すべき時期」の目安で、超過が積み上がると漏水・破裂・断水・道路陥没・濁水の発生可能性が上がります。

2. 長岡市の上水道管の現状

長岡市の上水道は、平成 17〜22 年(2005-2010 年)に旧 11 町村を編入した中越の中核事業体で、市営・単独で運営しています。市街地の高密度給水と中山間集落の長距離配水を同時に抱え、給水人口 239,932 人(県内 2 位)を統括専任職員 6 人(政府データ・R5)と業務委託でカバーしています。

2023 年度の主要数値(政府ダッシュボード):

指標値
配水管の距離2,096.23 km
送水管の距離39.60 km
導水管の距離6.96 km
上水道管の総距離(合計)2,142.79 km
うち寿命超え配水管16.90 km
うち寿命超え送水管5.25 km
うち寿命超え導水管0.18 km
寿命超え管の割合(合計)1.04%
今年新しく取り替えた管の距離5.90 km
年間更新率0.28%
給水人口239,932 人
職員数(政府データ・自治体専任正職員のみ)6 人
家庭用料金(口径 20mm・月 20㎥)3,240 円

管理団体を整理すると、配水管 2,096.23 km・送水管 39.60 km・導水管 6.96 km・浄水場のすべてを長岡市が単独で管理しています。新潟東港地域水道用水供給企業団(新潟市・新発田市・聖籠町に元水供給)や三条地域水道用水供給企業団(三条市・加茂市・田上町に元水供給)のような上流企業団への依存はなく、水源から家庭までの全区間が市営で、全量自己水源で完結しています。

新潟県内 27 事業体(上水道 25 + 用水供給 2)の中で、寿命超え割合 1.04% は 下位から 5 番目の水準です(三条地域用水・湯沢町・胎内市の 0%、村上市 0.21% を除いた低水準)。ただしこの数字は、2020 年以降の統合過程での集計単位変動を含んでおり、そのまま「長岡市の上水道は県内で新しい部類」とは読み取れません。

【グラフ:G1_老朽化と更新率推移.png】

上のグラフは、長岡市の上水道管の「寿命超え割合」と「年間更新率」の 9 年推移です。長岡市の場合は、2020-2023 年の統合過程が数字に反映されており、他事業者と同じように「9 年推移」として読むことができません。

  • 寿命超え割合は 2015 年 15.29% → 2019 年 24.89% → 2020 年 24.70% と一貫して増加していましたが、2021 年 2.48%(-90%)→ 2022 年 226.40%(100% を超えるあり得ない値・入力ミス)→ 2023 年 1.04% と大きく揺れています
  • 年間更新率も 2015 年 1.08% → 2019 年 0.67% の水準から、2020 年 0.02% → 2021 年 0.03% → 2022 年 0.36% → 2023 年 0.28% と低位で乱高下しています

この 9 年推移からは、実態としての老朽化ペース・更新ペースを読み取ることはできません。単年度(R5)の数字が「事業種別コード切替後の集計」であることを前提に受け止める必要があります。

3. 今のペースだと、全部新しくなるまで何年

年間更新率 0.28%(政府データ・R5)を単純適用すると、

  • 100 ÷ 0.28 ≈ 約 363 年

現在のペースが今後もずっと続いた場合、全上水道管を一度取り替え終わるまで約 363 年の計算です。

なぜ 40 年周期で更新できないと寿命超えが積み上がるのか

上水道管の法定耐用年数は 40 年です。理屈上、40 年で全管路を一巡できれば寿命超え管の割合は増えません。40 年で一巡するには、

  • 年間更新率 100 ÷ 40 = 2.5% が必要

長岡市の現状 0.28% は、この必要ペースの 約 11 分の 1 にすぎません。ただし、この数字は 2020-2023 年の集計単位変動の影響を含んでおり、実態としての更新ペースを直接反映しているとは読み取れません。9 年推移の 2015 年 1.08% → 2019 年 0.67% の水準を前提としても、必要ペース 2.5% には届いておらず、老朽化管が積み上がる構造は共通です。

4. 老朽化のペースに、更新は追いついているか

この問いに、政府データからは明確に答えを出せません。 2020-2023 年の統合過程で寿命超え割合・更新率とも数字が大きく乱れているためです。

  • 老朽化のペース:2019 年 24.89% → 2020 年 24.70% と一定の水準にありましたが、2021 年 2.48% → 2022 年 226.40%(入力ミス)→ 2023 年 1.04% と、集計単位変動と入力エラーが同時に発生した状態です
  • 更新のペース:2015 年 1.08% → 2019 年 0.67% の水準から、2020 年以降 0.02〜0.36% の低位で乱高下

実態としては、2021 年の全地域料金統一(旧簡易水道 → 長岡地域料金)と、政府ダッシュボードの事業種別コード切替(2022 まで上水 → 2023 簡水のみ)が同時に反映されつつある過渡期にあり、政府データ上の「寿命超え率が下がった・更新率が横ばい」は制度・集計の変化を含む数字です。 2015-2019 年の水準(寿命超え 15〜25%・更新率 0.5〜1.1%)で見ると、老朽化のペースに更新が追いついていない構造は他事業者と共通の水準です。

5. このまま続いたら、10 年後・20 年後はどうなる

【グラフ:G5_20年後予測.png】

過去の寿命超え割合の推移を単純に線形延長した場合の予測です。ただし長岡市の場合、9 年推移が集計単位変動と入力エラーの影響を大きく受けており、この予測グラフの数字を「実態」として読むことはできません。

外挿は「現在の集計方式が今後も変わらない」という単純仮定の計算です。実際には、統合過程が完了した後の「事業種別」がどうなるか・料金改定・災害・国の交付金・更新工事の加速などで変わります。

あわせて確認すべき情報:長岡市水道事業経営戦略 R6 改定案(新潟日報 2026 年報道)

長岡市水道事業経営戦略の R6 改定案では、政府ダッシュボードの単純な線形予測とは別に、2032 年度(令和 14 年度)に単年度赤字化する見込み が提示されています。10 年後(2032 年)の姿は、政府データの外挿ではなく、この経営戦略の見通しで確認する必要があります。背景には、給水人口の年 -1,700 人減少・企業債残高 147.90 億円の償還負担・大規模施設更新原資の不足の複合があると読み取れます(詳細は章 7 と章 8)。

6. なぜこうなっている──収支・借入・費用の構造

上水道事業は「独立採算」の地方公営企業です。原則、上水道料金収入・企業債(借入)・国庫補助金で運営し、市の税収(一般会計)からの繰入は限定的です。長岡市の場合、これに加えて 2021 年の全地域料金統一と 2020-2023 年の政府データ集計単位変動という特殊事情があり、収支の数字が他事業者と異なる読み方を必要とします。

6-1. 収支の状況:見た目は経常収支比率 1096.15% の圧倒的黒字だが、分母縮小効果を含む

【グラフ:G3_費用構成2023.png】

2023 年度の経常費用は 4.88 億円。上位費目は以下の通りです。

費目金額経常費用比内容
減価償却費22.23 億円──会計上、既存インフラの経年費用として計上(非現金支出・経常費用計上の内訳外に別集計)
職員給与費7.44 億円──人件費(自治体専任正職員 6 人分・2015-2019 年は 111〜113 人・2020 年 127 人・2021 年以降 6 人と乱高下)
修繕費2.35 億円──上水道管の修理・部品交換
委託料0.68 億円──外部発注
動力費0.26 億円──電気代・薬品代
支払利息0.18 億円──企業債の利払い
受水費0 円0%全量自己水源のため用水購入なし
経常費用 合計(政府データ)4.88 億円100%──

⚠️ 費用内訳の合計と経常費用(4.88 億円)の関係:減価償却費 22.23 億円だけで経常費用 4.88 億円を大きく上回っており、費用構成表の各費目合計と損益計算書上の経常費用が乖離しています。長岡市の R5 は「事業種別コードが 3:簡易水道事業のみ」に切り替わった影響で、経常費用に集計される範囲が縮小し、費用構成表の各費目とは異なる集計対象になっている可能性があります。表面上の経常費用 4.88 億円は「政府データ集計上の値」で、実質的な費用規模は費用構成表の合計値(減価償却 22.23 + 職員給与 7.44 + 修繕 2.35 + 委託 0.68 + 動力 0.26 + 支払利息 0.18 = 33.14 億円超)に近い水準です。

一方、経常収益は 53.46 億円(給水収益 1.25 億円 + 営業外収益 5.52 億円 + その他)。

区分収益費用差引
経常収支53.46 億円4.88 億円+48.59 億円(表面上は圧倒的黒字)

経常収支比率は 1096.15%(経常収益 ÷ 経常費用 × 100)で、県内 27 事業体の中で 最も高い数字です。ただし、この数字は次の複合要因を含んでいるため、他事業者との単純比較はできません。

分母縮小効果の内訳:

  • 給水収益が 2020 年 46.90 億円 → 2021 年 1.29 億円と 1 年で -97% 急落(2022 年 1.26 億円・2023 年 1.25 億円と低位で継続):事業種別コード切替と 2021 年の料金統一が同時に反映され、上水道分の料金収入の大部分が R5 の分母から外れた可能性が高いと読み取れます
  • 費用側は費用構成表の各費目(減価償却費 22.23 億・職員給与 7.44 億 等)を維持しつつ、損益計算書上の経常費用が 4.88 億円に縮小:分子(経常費用)が集計対象範囲の縮小で異常値化し、比率が極端に高くなった構造です
  • 経常収益 53.46 億円の内訳:給水収益 1.25 億円は 2%、営業外収益 5.52 億円は 10%、残り 46.7 億円は営業収益内訳(内訳詳細は政府ダッシュボード上で細分化されていません)

原価割れの見え方(分母縮小影響を含む): 給水収益 1.25 億円は経常費用 4.88 億円の 25.5% しかカバーできていません(料金回収率 2.75%)。ただし、この比率は分母(給水収益)が事業種別コード切替と料金統一で小さくなった結果として異常値化しており、他事業者と横並びで「長岡市が原価割れ」とは読み取れません。実質的な料金回収状況は、統合過程完了後の政府データが揃うまで断定できない状態です。

6-2. なぜ表面上の黒字なのに剰余金が減り借金も残っているか

【グラフ:G4_剰余金と企業債推移.png】

上のグラフは、内部留保(剰余金)と借金(企業債残高)の 9 年推移です。長岡市の場合、統合過程の影響でこの推移も揺れがあります。

  • 剰余金(内部留保):71.50 億円(2015)→ 68.44 億円(2019)→ 0.52 億円(2020)→ 0.86 億円(2021)→ 1.13 億円(2022)→ 1.49 億円(2023) ── 9 年で 約 -70 億円縮小
  • 企業債残高(借金):183.05 億円(2015)→ 173.79 億円(2019)→ 147.90 億円(2023) ── 9 年で -35.15 億円減少(※2020 年は 31.31 億円と集計変動年の異常値を含み、以降は集計対象の再編を反映した水準で推移)

剰余金は 2020 年に 68.44 億円 → 0.52 億円と 1 年で 67.9 億円が縮み、以降は 1〜2 億円の水準で低位推移しています。企業債残高は 9 年間で 35 億円ほど減少しており、償還を進めながら剰余金を大きく取り崩す方針が続いてきた履歴です。背景には、11 町村由来資産の会計統合と R3 年経営戦略策定に伴う会計処理・大規模施設更新原資の取り崩しの複合の可能性があります。

借入依存の見え方: 企業債残高 147.90 億円(絶対額県内 4 位・新潟市 501.11 億円・三条地域用水 160.34 億円・柏崎市 152.38 億円に次ぐ)は給水収益 1.25 億円の 118.76 倍。目安の「給水収益比 5.0 倍前後が業界目安」を大きく上回っており、算定上は追加借入の余地はほぼゼロという水準です。給水収益比の順位では県内 27 事業体(上水道 25 + 用水供給 2)全体で 2 位です(1 位 上越市 126.85 倍・2 位 長岡市 118.76 倍・3 位 妙高市 39.99 倍・4 位 村上市 33.81 倍・5 位 胎内市 25.95 倍)。

⚠️ ただし、給水収益比の上位 3 事業体(上越・長岡・妙高)はいずれも事業種別コード変動で分母(給水収益)が簡水分のみに縮小した数値の可能性を含み、他事業者と横並びで「長岡市が給水収益比 2 位で借入超過」とは断定できません。 実質的な企業債残高/給水収益の水準は、給水収益が旧水準(2019 年 46.86 億円)に戻れば 3.16 倍程度で、業界目安 5.0 倍を下回る計算になる可能性があります。ただし絶対額 147.90 億円は県内 4 位規模(新潟市・三条地域用水・柏崎市に次ぐ)で、償還負担は実在の課題であり、この点は数字の集計方式にかかわらず動きません。

6-3. 費用の推移

【グラフ:G6_主要費用推移.png】

上のグラフは、主要 4 費用の 9 年推移です。長岡市の場合、統合過程の影響で費用推移も年度で揺れがあります。

  • 減価償却費:2015 年 20.72 億 → 2019 年 23.25 億 → 2023 年 22.23 億と 20〜23 億円の水準で推移。R5 も事業種別コード切替後の高水準で計上されており、大規模インフラの経年費用が反映され続けている構造です
  • 職員給与費:2015 年 8.35 億 → 2019 年 8.05 億 → 2023 年 7.44 億と緩やかに減少傾向。政府データ上の職員数が 2019 年 111 人 → 2020 年 127 人 → 2021 年以降 6 人と乱高下した影響を含みます
  • 修繕費:2015 年 4.76 億 → 2019 年 3.34 億 → 2023 年 2.35 億と減少傾向。減価償却費に対する修繕費比率は 2015 年 23.0% → 2019 年 14.4% → 2023 年 10.6% と 9 年で半分以下に縮小しており、修繕投資は縮小傾向です
  • 委託料:2015 年 5.99 億 → 2023 年 0.68 億と 9 年で -88% の大幅縮小(R5 は事業種別コード切替後の集計範囲縮小の影響を含む)

受水費は 9 年連続 0 円。長岡市は市域内の水源(信濃川流域・妙見浄水場ほか)で完結しており、上流企業団への支払いはなく、その分の固定費が発生しない構造です。この構造は関川村・妙高市(受水費 8 年計上)とは対照的で、料金・費用の変動が上流の判断に左右されない自立性を持ちます。

6-4. 判定:11 町村合併市 × 2021 年料金統一 × 2032 年赤字化見込みが生む「大都市型の分母縮小事例」

長岡市の上水道の姿を、他 24 事業者と区別する 3 つの構造:

  • 平成 17-22 年の 11 町村合併(中之島・越路・三島・山古志・小国・和島・寺泊・栃尾・与板・川口ほか)で編入した旧町村の管路が 総管路 2,142.79 km(県内 3 位)に併存・給水人口 239,932 人(県内 2 位)を統括する広域インフラ
  • 2021 年の全地域料金統一(旧簡易水道 → 長岡地域料金)と事業種別コード切替が 2020→2021 の 1 年間に同時反映され、給水収益が 2020 年 46.90 億円 → 2021 年 1.29 億円と -97% 急落
  • 長岡市水道事業経営戦略 R6 改定案で 2032 年度に単年度赤字化する見込み を提示(新潟日報 2026 年報道)── 給水人口の年 -1,700 人減少・企業債 147.90 億円(絶対額県内 4 位)の償還負担・大規模施設更新原資の不足の複合

この構造下で、単年度の財務比率は次のように「大都市型の分母縮小事例」を呈します:

  • 給水収益 1.25 億円 < 経常費用 4.88 億円(料金回収率 2.75%)── 見た目は原価割れ
  • 企業債残高 147.90 億円 / 給水収益 1.25 億円 = 118.76 倍(給水収益比の県内 2 位・絶対額は県内 4 位)── 見た目は借入依存
  • 営業外収益 5.52 億円 / 経常費用 4.88 億円 = 113.2%(目安 30% を大きく超過)── 見た目は補助金・繰入依存

これらの数字だけを見れば、長岡市は「原価割れ + 補助金・繰入依存 + 借入依存の 3 重構造」に該当します。3 重構造の事業体は県内 27 事業体中 5 事業体(長岡・佐渡・胎内・阿賀町・関川村)のみで、大規模都市の類型は長岡市のみ(他 4 事業体は山間過疎町村)です。

ただし、これらの比率のいずれもが分母(給水収益)が事業種別コード切替と 2021 年料金統一で縮小した結果として異常値化した数字であり、他 24 事業者と横並びで「長岡市が県内で最も悪い部類」とは読み取れません。10 年推移では 2022 年 寿命超え率 226.4%(100% 超)・2020 年 給水人口 6,360 人(実質 24 万人)・2022 年 配水管 162.62 km(実質 2,000 km) の 3 件の明らかな入力ミス級異常値も検出されており、急変検出 16 件(県内 4 位)と合わせ、政府データの安定性は県内下位に位置します。

以上を踏まえると、長岡市の政府データは「単年度なら参考として使えるが、10 年推移や他事業者との横並び比較には向かない」大都市型の特殊事例です。実質的な財源計画は R6 経営戦略改定案の 2032 年赤字化見込みを基準に、業務委託拡大・広域化議論と併せて検討する段階にあります。次の章 7.5 で、この背景(管理団体・お金の流れ・自治体一般会計財政・11 町村合併履歴・2021 年料金統一の 5 サブ節)を整理します。

7.5. 長岡市の上水道はどう運営されているか(背景情報)

管理団体・お金の流れ・自治体一般会計財務・11 町村合併履歴と 2021 年料金統一・政府データの読み方 の 5 つの観点を組み合わせると、長岡市の上水道の「なぜ数字が乱れるか」「誰の金で・誰が運営しているか」が一望できます。この章は数字の背景の整理です。

7.5.1. 管理団体マップ:配水管・送水管・導水管・浄水場すべて長岡市(市営・単独)・全量自己水源

長岡市の上水道の管理関係を整理すると、以下の通りです。

区間距離(R5)管理団体上流依存
導水管(水源 → 浄水場)6.96 km長岡市なし(市域内水源で完結)
浄水場(妙見浄水場ほか)──長岡市水道局──
送水管(浄水場 → 配水池)39.60 km長岡市なし
配水管(配水池 → 家庭)2,096.23 km長岡市──

水源から家庭までの全区間が長岡市(市営・単独) で、全量自己水源で完結しています。新潟県内 25 上水道事業者の中で「上流企業団に依存する事業体」は以下の 6 市町のみで、長岡市を含む残る 19 事業体は自己完結型です。

上流企業団依存する下流市町内容
新潟東港地域水道用水供給企業団新潟市・新発田市・聖籠町上流の導・送水管と自己水源以外の元水供給
三条地域水道用水供給企業団三条市・加茂市・田上町上流の導・送水管と大谷ダムからの元水供給

長岡市はこの 6 市町には含まれず、水源トラブル・上流企業団の料金改定の影響を直接には受けません。同時に、上流企業団に費用を分担してもらう選択肢もなく、水源管理から配水まで全ての責任を市営で背負う構造です。県内 3 位規模の広域管路(給水人口は 2 位)を、単独で全区間管理する事業体は、新潟市・上越市・長岡市の 3 大都市のうち、上流企業団非依存では長岡市と上越市のみです(新潟市は新潟東港企業団依存)。

7.5.2. お金の流れ:料金 1.25 億 + 営業外収益 5.52 億 + 企業債残高 147.90 億

長岡市の上水道の R5 年度の収支は次の構造です。

区分金額割合(経常収益比)内容
収入① 給水収益(住民の水道料金)1.25 億円2%経常収益 53.46 億円のうち 2%(2019 年は 46.86 億円)
収入② 営業外収益(他会計繰入・補助金等)5.52 億円10%経常収益の 10%・給水収益の 4.4 倍
収入③ 営業収益内訳ほか46.69 億円87%内訳詳細は政府ダッシュボード上で細分化されていない
経常収益 合計53.46 億円100%
経常費用4.88 億円──減価償却 22.23 億・職員給与 7.44 億等の費用構成表合計 33 億超と乖離
経常黒字+48.59 億円──表面上は圧倒的黒字(分母縮小効果を含む)
建設改良費(9 年平均)18.45 億円/年──40 年周期の必要投資 127.4〜212.4 億円の 8.7〜14.5%
企業債残高(R5 末)147.90 億円──給水収益の 118.76 倍(分母縮小効果を含む・絶対額県内 4 位規模)
手元キャッシュ(R5)70.81 億円──剰余金 1.49 億円と別軸の経常キャッシュ相当
剰余金(R5)1.49 億円──2015 年 71.50 億円から 9 年で -70 億円縮小

注目点: 表面上は経常収益 53.46 億円・経常費用 4.88 億円で圧倒的な黒字(+48.59 億円)に見えますが、給水収益 1.25 億円は経常費用 4.88 億円の 25.5%(料金回収率 2.75%)にとどまり、営業外収益 5.52 億円が給水収益の 4.4 倍にあたる構造です。「住民の水道料金より、他会計繰入・補助金等の額のほうが大幅に多い」構造で、県内でもこの逆転関係を持つのは補助金・繰入依存の代表パターンです。ただし前述の通り、R5 の給水収益 1.25 億円は事業種別コード切替と 2021 年料金統一で分母が縮小した数値であり、R5=1.25 億円・R4=1.26 億円・R3=1.29 億円・R2=46.90 億円(前年比ほぼ変化なし)・R1=46.86 億円と、2020→2021 の 1 年間に -97% 急落した経緯を持ちます。実質的な料金収入の水準は集計対象範囲によって大きく異なります。

7.5.3. 自治体一般会計財政:財政力指数 0.59・「財政余裕(水道への繰入余地あり)」判定

決算カード R5(総務省・地方財政状況調査)によれば、長岡市役所本体の財政ステータスは次の通りです。

指標値意味
財政力指数0.59県内 30 市町村の上位クラス(1.0 未満が交付団体・数字が大きいほど自主財源比率が高い)
実質公債費比率7.3%18% 未満で健全性目安内
将来負担比率73.1%350% 未満で健全性目安内
経常収支比率92.6%95% 未満で「硬直化していない」の目安内
公債費負担比率16.1%3 者中で最も高い(大都市型の借金負担)
標準財政規模715.76 億円妙高市 122.60 億円の約 5.8 倍・関川村 34.48 億円の約 20.8 倍
公営事業繰出金 合計134.24 億円標準財政規模の 19% を公営事業繰出に
R5 上水道への繰出金1.20 億円当年度実績
R5 簡易水道への繰出金3.27 億円上水道より水道系の主流
R5 下水道への繰出金39.17 億円下水道が最大の繰出先
水道系繰出金 合計(上水+簡水)4.47 億円妙高市 2.31 億円の約 1.9 倍・関川村 0.58 億円の約 7.7 倍
総合判定財政余裕(水道への繰入余地あり)大都市型の財政余力

これらの指標を組み合わせると、長岡市は「財政余裕」「財政硬直」「中間」の 3 区分中 「財政余裕(水道への繰入余地あり)」 に分類されます。関川村・妙高市の「中間」判定とは異なるポジションで、標準財政規模 715.76 億円は関川村(34.48 億円)の約 20.8 倍・妙高市(122.60 億円)の約 5.8 倍の余裕を持っています。

ただし公債費負担比率 16.1% は 3 者中で最も高い(関川村 13.4%・妙高市 10.5%)水準で、「余裕はあるが借金負担も大きい」大都市型の財政特性です。標準財政規模が大きいだけに、公債費の絶対額(実質公債費比率 7.3% × 標準財政規模 715.76 億円 ≒ 年 52 億円)も相応に大きい構造にあります。

上水道への追加繰入余地の読み取り: R5 年度に上水道 1.20 億円 + 簡易水道 3.27 億円 = 水道系 4.47 億円を既に投入しています。妙高市(2.31 億円)の約 1.9 倍・関川村(0.58 億円)の約 7.7 倍の水準で、既に相応の繰入がされている状態です。追加拡大には、下水道側 39.17 億円との調整・市議会での予算配分議論が必要です。「財政余裕」判定ではあるものの、下水道が水道系全体(水道系 4.47 + 下水道 39.17 = 43.64 億円)の 90% を占める配分となっており、上水道への追加繰入を拡大する場合はこの配分をどう組み替えるかが焦点となります。

7.5.4. 11 町村合併履歴と 2021 年料金統一

長岡市の上水道事業の歴史は、平成 17〜22 年(2005-2010 年)の 11 町村合併から令和 3 年(2021 年)の全地域料金統一まで、20 年近くにわたる制度変更が連続してきた特殊なタイムラインです。

年出来事
平成 17 年(2005)旧長岡市 + 中之島町・越路町・三島町・山古志村・小国町・和島村・寺泊町・栃尾市 が合併
平成 18〜22 年(2006-2010)与板町・川口町ほかを順次編入
平成 16 年(2004)新潟県中越地震・山古志村全域断水(合併前年)
令和 3 年 3 月(2021)長岡市水道事業経営戦略策定(R3-R12 の 10 年計画)
令和 3 年(2021)全地域の上水道と簡易水道を長岡地域料金に統一(旧 11 町村の簡易水道分の料金体系を旧長岡市の上水道料金に統一)
令和 6 年(2024)長岡市水道事業経営戦略 R6 改定案・2032 年度赤字化見込みを提示
令和 14 年度(2032)予定単年度赤字化見込み(新潟日報 2026 年報道)

11 町村合併の意味: 旧長岡市に 11 町村を編入した結果、市街地の上水道と、旧町村ごとの簡易水道が同一事業体内に混在する構造となりました。合併町村ごとに敷設時期・材質・耐震規格の異なる管路が併存しており、全域を横並びで管理・更新する体制の構築に時間を要してきた背景があります。

2021 年料金統一の意味: 旧 11 町村の簡易水道分の料金体系を旧長岡市の上水道料金に統一し、地域格差を解消しました。これに伴い会計処理・集計単位の再編が同時期に進み、政府ダッシュボード上の事業種別コードの動きにも影響した可能性があります。

R6 経営戦略改定案と 2032 年赤字化見込み: 令和 6 年(2024 年)に長岡市水道事業経営戦略の R6 改定案が示され、給水人口減少(年 -1,700 人・9 年で -6.1%)・料金収入の逓減・企業債残高 147.90 億円の償還負担・大規模施設更新原資の不足の複合により、2032 年度に単年度赤字化する見込み が提示されました(新潟日報 2026 年報道)。業務委託拡大・広域化議論もこの見通しを背景に進んでいます。

7.5.5. 政府データを読むときの注意点──統合影響・事業種別コード不安定・単純比較困難

長岡市の政府ダッシュボードのデータは、以下の理由で他事業者と単純比較できません。

事業種別コードの変動:

政府ダッシュボード上の長岡市の事業種別コードは、10 年間で以下のように動いています。

年度事業種別コード給水人口総管路距離給水収益
2014-20191:上水道事業のみ249,236〜257,197 人2,173.99〜2,324.13 km46.86〜48.55 億円
20201:上水道事業のみ6,360 人(明らかな入力異常)2,216.20 km46.90 億円(前年比ほぼ変化なし)
20211:上水道事業のみ244,842 人2,092.78 km1.29 億円(1 年で -97% 急落)
20221:上水道事業のみ242,706 人162.62 km(入力ミス)1.26 億円
20233:簡易水道事業のみ239,932 人2,142.79 km1.25 億円

給水人口 24 万人規模で「簡易水道事業のみ」に分類されるのは水道法の定義(給水人口 5,001 人以上は上水道事業)と矛盾しており、集計上の異常と読み取れます。

明らかな入力ミス級異常値 3 件:

  • 2022 年 寿命超え率 226.4%(100% を超えるあり得ない値)
  • 2020 年 給水人口 6,360 人(前後年度は 24 万人前後・-97.5%)
  • 2022 年 配水管 162.62 km(前後年度は 2,000 km 前後・-92%)

急変検出件数 16 件は県内 4 位(1 位 上越市 32 件・2 位 妙高市 21 件・3 位 糸魚川市 17 件・5 位 村上市 16 件)で、政府データの安定性は県内下位に位置します。

このため、次の点に留意する必要があります:

  • 単年度(R5)の寿命超え率・更新率・給水収益等は「集計単位変動後の政府データ」として受け止める
  • 9 年推移として時系列比較することは避ける(集計対象が年度で切り替わっているため)
  • 他事業者との横並び比較には注意が必要(他事業者は同じ集計方式で 9 年通じているケースが多いため)
  • 実質的な財務状況・老朽度は、統合過程完了後の政府データ・長岡市水道事業経営戦略(R6 改定案)等の一次資料を併せて確認する必要があります

7. 今後、良くなる見込みはあるか

7-1. 収入源:給水人口は緩やかに減少・2032 年赤字化見込み

【グラフ:G2_給水人口と給水収益推移.png

  • 給水人口:255,628 人(2015)→ 249,236 人(2019)→ 6,360 人(2020・異常値)→ 244,842 人(2021)→ 239,932 人(2023) ── 9 年で -15,696 人(-6.14%・年 -1,700 人ペース)
  • 給水収益:48.43 億円(2015)→ 46.86 億円(2019)→ 46.90 億円(2020・ほぼ変化なし)→ 1.29 億円(2021・1 年で -97% 急落)→ 1.26 億円(2022)→ 1.25 億円(2023) ── 事業種別コード切替と 2021 年料金統一が 2020→2021 の 1 年間に反映

長岡市の給水人口は緩やかな減少傾向にあり、年 -1,700 人のペースで推移しています。この減少ペースが続く場合、10 年後(2033 年)にはさらに約 -17,000 人(残 22.3 万人)・20 年後(2043 年)には約 -34,000 人(残 20.6 万人)と、料金収入の逓減が続く構造です。

給水収益は 2020 年以降の集計単位変動で数字上大きく縮んでいますが、実態としての料金収入水準は 2019 年(46.86 億円)以前の水準で判断する必要があります。長岡市水道事業経営戦略 R6 改定案が示す 2032 年度単年度赤字化見込み は、給水人口減少・企業債償還負担・大規模施設更新原資の不足の複合によるものと読み取れます。

7-2. 上水道インフラの資産価値

【グラフ:G7_資産推移.png】

上のグラフは、上水道インフラの取得原価(帳簿上の資産価値)と減価償却累計額の推移です。

  • 償却資産(取得原価・R5 CSV):2023 年時点で 約 1,081.86 億円
  • 減価償却累計額(R5 CSV):58.05 億円(R5 は事業種別コード切替に伴う集計変動年で前年 618.79 億円から縮小した値)
  • 減価償却率(R5 CSV)= 55.79%:帳簿上、資産の半分以上は既に償却済み

つまり、長岡市が保有する上水道インフラは簿価ベースで約 1,082 億円で、県内では新潟市に次ぐ規模です。このうち半分以上は既に減価償却済みで、帳簿上は「更新期を迎えつつある資産」の割合が過半に達しています。

なお、償却資産の 9 年推移は 2015 年 937.41 億円 → 2020 年 1,050.4 億円 → 2023 年 1,081.9 億円と増加傾向にあり、11 町村由来の資産統合が段階的に反映されている状態です。減価償却率 55.79% は 2020-2022 年の統合過程で振れが少なく、資産全体の老朽度としては県内の他大規模事業者と同等水準です。

7-3. 本気を出したら何年で更新できるか

【グラフ:G8_建設改良費と必要投資額.png】

上のグラフは、長岡市の建設改良費の推移と、40 年周期で全部更新するために必要な年間投資額を対比したものです。

単純計算の内訳:

項目保守計算楽観計算
総管路距離2,142.79 km2,142.79 km
km 単価2.4 億円/km(過去平均の 60%)4.0 億円/km(過去 9 年平均そのまま)
全部更新の総費用約 5,097 億円約 8,496 億円
÷ 40 年 = 必要年投資額約 127.4 億円/年約 212.4 億円/年
現状の実績(9 年平均)18.45 億円/年18.45 億円/年
必要ペース / 現状の倍率約 6.9 倍約 11.5 倍
現状の充足率14.5%8.7%

km 単価の楽観計算は「過去 9 年の建設改良費 ÷ 更新距離」の平均。単価には「新規敷設」「浄水場工事」も含まれるため、更新のみのコストとしては割高です。保守計算では 60% を実質更新費と仮定しました。

現状の建設改良費 9 年平均 18.45 億円/年 は、40 年周期の必要ペースの 8.7〜14.5% にすぎません。県内 3 位規模の広域管路(給水人口は 2 位)を 40 年周期で更新するには、年 127〜212 億円の投資が必要で、長岡市の現状規模ではその 1 割程度しかカバーできていない状態です。

7-4. 何年で全部更新できるか──5 つのシナリオ + 自治体一般会計の繰入余地

長岡市の上水道管を「何年で全部更新できるか」を、年間投資額を変えた 5 つのシナリオで試算します。全部更新の総費用は保守計算で 約 5,097 億円 とします。決算カード R5 の自治体一般会計財務データから、自治体一般会計側の繰入余地の目安も併記します。⚠️ 長岡市の場合は統合過渡期のため単純解釈できません。参考としてのみ提示します。

シナリオ年投資額うち追加必要額手元資金 1.49 億円が枯渇するまで全部更新までの年数自治体一般会計の繰入余地
A. 現状維持(料金値上げなし)18.45 億円+0 億円徐々に消耗約 276 年現状水準(上水道 1.20 億円 + 簡水 3.27 億円)
B. 手元資金全額を 20 年で追加投入18.52 億円+0.07 億円約 20 年約 275 年追加調整不要
C. 家庭用料金 1.5 倍値上げ相当(月 3,240 → 4,860 円)48.45 億円+30 億円約 0.05 年約 105 年追加繰入で対応可能な範囲
D. 40 年周期・保守計算127.43 億円+109 億円約 0.03 年(約 10 日)40 年一般会計から年 100 億円超の繰入が必要 → 標準財政規模 715.76 億円の 14% → 財政余裕判定でも下水道 39.17 億円繰出との配分議論・企業債発行が前提
E. 40 年周期・楽観計算212.39 億円+194 億円約 0.01 年(約 4 日)24 年上記より更に厳しい・大規模都市の財政余裕でも単独実現は困難・国庫補助・広域統合等が前提

この試算からわかること:

  • 現状維持(A)でも約 276 年かかる。過去 9 年の実績(18.45 億円/年)を維持しても、寿命超え割合は増え続けます
  • 手元資金を全部使っても(B)、追加投入できるのは年 0.07 億円程度。長岡市の 1.49 億円という小さな手元資金では、全体の総費用 5,097 億円に対して微々たる上乗せしかできません
  • 料金 1.5 倍のシナリオ C でも、40 年周期には全く届かない(約 105 年)。企業債残高が既に給水収益比 118.76 倍と業界目安を大幅超過しており、追加借入の余地は算定上ゼロです
  • 40 年周期(D・E)を目指すには、市の一般会計からの繰入を大幅拡大するか、国庫補助金の大幅拡大・広域統合が必要。長岡市の一般会計は「財政余裕」判定ですが、単独で D・E を実現する余地は限定的です

⚠️ ただし、上記の充足率 8.7〜14.5% は分母(総管路 2,142.79 km)が政府データ前提です。実質的な必要投資額は、統合過程完了後の政府データ・長岡市水道事業経営戦略 R6 改定案の見通し・R6-R12 の中長期投資計画で確認する必要があります。

結論: 長岡市の上水道事業は、現状の財源だけでは 40 年周期での更新は不可能です。以下のいずれか、または組合せが必要になる可能性があります。

  • 国庫補助金の大幅拡大(大都市水道広域化補助・水道基盤強化交付金)
  • 業務委託拡大(民間包括委託の部分導入・妙高モデルとは異なる直営維持型)
  • 段階的な料金値上げ(R6 経営戦略改定案での料金改定議論)
  • 広域化の議論(新潟県内・県外事業者との連携)

8. 住民として確認できること

長岡市役所・長岡市議会・長岡市水道局・新潟県のホームページで、以下が公開されています。長岡市の場合、通常の水道事業者と異なり 「11 町村合併後の広域インフラ運営」「2021 年料金統一後の集計単位変動」「2032 年赤字化見込みへの向き合い方」 を確認する視点が加わります。住民として確認したいポイントは 3 段階に整理できます。

8-1. 長岡市水道局への問合せと経営戦略の実運営状況

令和 3 年 3 月に策定された長岡市水道事業経営戦略(R3-R12)と、令和 6 年(2024 年)に示された R6 改定案での 2032 年度赤字化見込み への向き合い方は、住民として最も重要な確認事項です。

確認先内容どこで見るか
長岡市水道局検針・料金徴収の窓口対応・住民照会への回答体制・24 時間緊急対応窓口長岡市水道局の公式サイト・水道担当課への直接照会
長岡市水道事業経営戦略R3-R12 の 10 年計画・R6 改定案の 2032 年赤字化見込み・料金改定議論・大規模施設更新計画長岡市役所サイトの「経営戦略」ページ
長岡市議会での水道関連議論経営戦略に関する定期報告・料金改定議論・住民サービスの苦情対応・工事進捗長岡市議会の会議録

8-2. 業務委託拡大・広域化議論の進捗

長岡市の R6 経営戦略改定案では業務委託拡大・広域化の検討が進んでいますが、妙高市の妙高モデル(ガス+上下水道 4 事業一体民間包括委託・R4.4 開始・妙高グリーンエナジー株式会社)とは異なる方針です。長岡市は市営継続で部分委託の拡大を検討する段階にあります。

確認先内容どこで見るか
業務委託拡大の検討状況部分委託の範囲・受託候補・議会での議論長岡市議会の会議録・長岡市経営戦略ページ
広域化議論の動向新潟県内他事業者との連携議論・新潟県保健福祉部の広域化計画新潟県保健福祉部の関連ページ・長岡市議会
妙高モデル等 他事業者事例の参考検証民間包括委託の全国事例・国土交通省 PPP/PFI 検討会資料国土交通省の関連ページ・妙高市経営戦略ページ

8-3. 11 町村合併時の管路混在の解消順位

11 町村合併(平成 17-22 年)で編入した旧町村ごとに敷設時期・材質・耐震規格の異なる管路が併存しています。更新の順位付けは、地震リスク(山古志・栃尾等の中山間地)・老朽度・住民密度・費用対効果の複合判断となる余地があります。

確認先内容どこで見るか
大規模施設更新計画浄水場・配水池・幹線管路の更新順位・費用計画長岡市経営戦略ページ・議会予算資料
中山間集落の給水維持方針山古志・小国・栃尾・寺泊等の集落単位の給水維持方針長岡市議会の会議録・長岡市水道局への直接照会
2004 年中越地震の教訓の反映地震耐性の強化計画・耐震管化率の目標長岡市水道事業経営戦略ページ

9. データ・注意事項・免責

データ源:

  • 政府統計ダッシュボード 水道事業ダッシュボード(内閣府・厚労省/国交省)
    • 表 1(施設及び業務概況):管路延長・給水人口・料金・職員数
    • 表 20(損益計算書):営業収益・営業費用・営業外収益
    • 表 21(費用構成表):費用内訳
    • 表 22(貸借対照表):資産・負債・剰余金
  • 総務省 地方財政状況調査 決算カード R5(自治体一般会計財務)
  • 対象年度:2015-2023 年度(2014 年度は集計方式の関係で管路データが欠落しているため、記事本文では 2015 年度以降を使用)
  • 事業者コード:152021(長岡市)
  • 参考整理データ:管理団体マップ・お金の流れマップ・自治体一般会計財務・事業体役割分類・シナリオ試算
  • 長岡市水道事業経営戦略(R3-R12・R6 改定案)
  • 新潟日報「2032 年度に赤字化・長岡市が水道事業の経営戦略改定案」(2026 年)

スコープの注意事項:

  • 本記事は長岡市の「上水道」のみを扱います。 下水道(公共下水道・農業集落排水)は別事業・別会計で、この記事では扱いません
  • 「上水道」「上水道管」「配水管」「送水管」「導水管」の用語は、水道法および会計上の区分に従って使用しています

数値・判定の注意事項(長岡市固有):

  • データ信頼性の判定:低 ── 政府ダッシュボードの長岡市の事業種別コードは 2014-2022 年が「1:上水道事業のみ」、2023 年のみ「3:簡易水道事業のみ」に切替されており、給水人口 24 万人規模で簡易水道分類は水道法の定義(給水人口 5,001 人以上は上水道事業)と矛盾しています。急変検出件数 16 件は県内 27 事業体中 4 位(1 位 上越市 32 件・2 位 妙高市 21 件・3 位 糸魚川市 17 件・5 位 村上市 16 件)です。単年度(R5)の数字は「集計単位変動後の値」として使えますが、10 年推移として時系列比較すること・他事業者と横並び比較することは避ける必要があります
  • 給水収益の -97% 急落:2020 年 46.90 億円 → 2021 年 1.29 億円と 1 年で -97% 急落し(2023 年 1.25 億円)、実質的な料金収入水準は 2020 年以前の水準で判断する必要があります。2021 年の全地域料金統一(旧簡易水道 → 長岡地域料金)と事業種別コード切替が 2020→2021 の 1 年間に同時に反映された結果と読み取れます
  • 明らかな入力ミス級異常値 3 件:2022 年 寿命超え率 226.4%(100% 超のあり得ない値)・2020 年 給水人口 6,360 人(実質 24 万人)・2022 年 配水管 162.62 km(実質 2,000 km 前後)
  • 経常収支比率 1096.15%・企業債残高対給水収益比率 118.76 倍・料金回収率 2.75%・給水収益 1.25 億円は他事業者と横並びで語らない:いずれも分母(給水収益)が事業種別コード切替と料金統一で縮小した結果として異常値化しています。上越市(126.85 倍・県内 1 位)・妙高市(39.99 倍・県内 3 位)も同種の分母縮小影響を含んでおり、この 3 事業者の比率は他事業者と横並び比較不可
  • 職員数 6 人は政府データの専任正職員のみ:過去年度は 2015-2019 年 111〜113 人 → 2020 年 127 人 → 2021 年以降 6 人と乱高下しており、政府データの職員数集計基準の変更を含む可能性があります。実務の大半は業務委託・他課からの兼務・会計年度任用職員でカバーされている可能性があります

数値・判定の注意事項(共通):

  • 「寿命超え」= 法定耐用年数 40 年経過。物理的に壊れる年数ではなく、会計上の目安
  • 「今のペースで約 363 年(更新率 0.28% 基準)」= 現在の年間更新率が今後もずっと同じという単純計算。実際は料金改定・災害・更新加速で変わる
  • 「業界目安 5.0 倍」は「一般に給水収益比 5.0 倍前後が目安と言われる」水準を採用しており、明確な国家基準ではありません
  • 企業債残高対給水収益比率 118.76 倍は 県内 27 事業体中 2 位 で、「県内最悪」ではありません(1 位 上越市 126.85 倍・2 位 長岡市 118.76 倍・3 位 妙高市 39.99 倍。ただしいずれも事業種別コード変動で分母が縮小した数値の可能性を含みます)。絶対額 147.90 億円は県内 4 位規模(新潟市 501.11 億円・三条地域用水 160.34 億円・柏崎市 152.38 億円に次ぐ)で、償還負担は実在の課題であり、この点は数字の集計方式にかかわらず動きません
  • 「建設改良費」は政府ダッシュボードに直接項目がないため、貸借対照表の償却資産の年増加額から推定した代理値です
  • 「40 年で全部更新に必要な年間投資額」の km 単価は 過去 9 年の「建設改良費 ÷ 更新距離」の平均から算出しました。単価には新規敷設・浄水場工事も含まれるため、保守計算では 60% を実質更新費と仮定しています
  • 「シナリオ表」の家庭用料金の値上げ倍率は、追加必要年額 ÷ 給水収益 1.25 億円で単純計算した数値です。実際の値上げは料金体系(基本料金・従量料金)の設計によって変わり、負担割合も家庭・事業者で異なります。なお長岡市の場合は給水収益 1.25 億円自体が事業種別コード切替で縮小した数値で、実質的な料金負担の議論は 2019 年水準(46.86 億円)を基準に別途検証する必要があります
  • 「シナリオ C・D・E」の手元資金枯渇年数は、初年度から追加投入を続けた場合の単純計算です。実際は借入・料金改定・補助金申請等で年ごとの調整が入ります
  • 「上水道への追加繰入余地」の判断は決算カード R5 の指標(財政力指数・実質公債費比率等)から整理した 3 区分(財政余裕・中間・財政硬直)に基づく大まかな読み取りです。個別の予算判断は市議会・市行政の議論による
  • 政府ダッシュボード表 1 の「職員数」は、上水道事業に従事する 自治体の専任正職員のみ を集計しています。会計年度任用職員・民間業者への委託先の職員・他課からの兼務職員は含まれていません
  • 「借入余地 0 億円」は、企業債残高が業界目安「給水収益比 5.0 倍未満」を既に超過しているための算定上の値です。実際の借入可否は資本費平準化債・過疎対策事業債等の制度枠で変わる可能性があります
  • 用水供給企業団(新潟東港・三条地域)は配水管ゼロで住民安全性の直接指標に使えないため、本記事の県内 25 事業者比較には含めていません
  • 2032 年度赤字化見込み:長岡市水道事業経営戦略の R6 改定案で提示された見通し(新潟日報 2026 年報道)を基に記載しています。実際の 2032 年時点の収支は、料金改定・給水人口の実推移・国庫補助・広域化進展等で変わる可能性があります

免責:

本記事は、公表データからの計算と分析結果を提示するもので、上水道事業の経営判断・料金改定・特定の政策の妥当性を評価するものではありません。長岡市水道事業経営戦略(R3-R12・R6 改定案)と 2032 年度赤字化見込みは、長岡市の一次資料および新潟日報 2026 年報道を参照して整理しています。数値の解釈には他の資料も併せてご参照ください。

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